GDPは教えてくれない

朝日新聞2月14日6面:贈り物によく使われる「とらや」のようかんは、いわゆるデパ地下でも売られている。その虎屋社長、黒川光博さん(72)の5年越しの思いがこの年明けにまたひとつ、かなった。 「1月3日より初売出し」年末の東京・三越銀座店に垂れ幕がかかった。三越伊勢丹ホールディングスは今年から8店で、正月休みを「元旦だけ」から1月2日まで延ばした。 「休業日を増やして」黒川さんら食品街の社長たちは2011年夏、店を出す大手百貨店に申し入れた。その数ヵ月前の3月11日、黒川さんは被災地の光景をテレビでみて、「自分たちはこのままでいいのだろうか」と、生きる意味を考えた。バブル経済がはじけた1990年代から、百貨店は休みの日を削り、売上競争をしてきた。食品街の仲間に相談すると「百貨店で働く人が疲弊している」という声が多い。食品街の社長たちが、店先を借りる百貨店の営業体制に口を出すのは珍しいが、三越伊勢丹は「スタッフの英気を養える」と休業日を増やしてきた。 百貨店のお客さんの反応もまずまずで「経済至上主義と決別し、松の内は休んだら」との声もあった。虎屋にとっては三越伊勢丹に出すお店で計約1千万円の減収だが、黒川さんは「休みをとって頑張れば、売り上げはついてくる」と気にしない。 経済成長って何? 米国の92歳と86歳のおばあちゃんが、その答えを探す映画「シャーリー&ビンダ~ウォール街を出禁にった2人」が上映されている。車いすの2人は、約50年前の米大統領選に出た、ロバート・ケネディ上院議員の演説をネットでみつけ、数字を追い求めている経済のあり方に疑問を持つ。「GNP(国民総生産数)はすべてのものを測るが、私たちの人生に価値を与えるものは除かれている」ケネディは、演説で「子どもの健康」「夫婦の絆」などを例にあげている。 当時のGNPに代わり、今は一国の富を測る目安にGDP(国内総生産)が使われる。日本人による富なのか、日本国内の富なのかの違いはある。含まれない価値があることは、ケネディの時代とそう変わらない。 家事や子育ては、お金を出して他人に任せればGDPに含まれるが、多くの家庭は自分たちでやりくりしている。内閣府の3年前の試算によると、その価値はお金にすると、低く見積もっても約90兆円になる。 来年度中にGDPの計算方法は16年ぶりに本格改定される。企業の研究開発費など15兆円以上が加わり、約500兆円の名目GDPは3%超増える。「20年ごろまでにGDP600兆円」という政府の目標には近づく。1日増えた正月休みにも、大きな価値がある。しかし、GDPは教えてくれない。
😐 編集委員 堀篭俊材(ほりごめ としき)

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