9月9日てんでんこ 音楽の力【12】

朝日新聞2017年9月6日3面:「アルバムを作ろう」。小曽根のメールのチック・コリアがすぐ返信した。 「日本の被災地支援のチャリティーCDに参加してくれないか」。2011年4月、小曽根真は世界中のジャズ演奏者や歌手の友人に一斉メールを打った。「震災を世界的な問題として捉えてほしい」との思いだった。
いち早く「ぜひやろう」と返信してきたのは、ピアニストのチック・コリア(76)だった。ウクレレ演奏者のジェイク・シマブクロ(40)、ビブラファン奏者のゲイリー・バートン(74)・・・。他にも10人のミュージシャンが次々と賛同のメールを返してきた。翌月、米フロリダ州にあるチックのスタジオなどで録音した。妻の神野三鈴は「ふるさと」を歌った。ジャケットデザインは佐藤加士和(52)が買って出た。
7月、9曲入りの「リブ・アンド・レット・リブーラブ・フォー・ジャパン(共存=生き、生かされている。日本に愛を)」を出した。全員無報酬、収益は全額寄付した。震災直後、小曽根にはためたいがあった。阪神大震災は故郷で起き、家族も被災したが、東北には親類もいない。神野が「あなたが動けばできることがあるのに何を待っているの」と背中を押した。
13年7月には小曽根は自らビックバンド「NO NaMe Horses」(NNH)の15人で岩手県大槌町など6カ所を回った。2年前、避難所で促されてピアノを弾いたが、「衣食住がある程度落ち着いてからが本当の出番」と思っていた。「ヤガッタトライ(やってみなきゃ)」など乗りのいい曲を主にした。
「怖いくらい、聴衆の方が音を取りに来ている。最高だ」。演奏中、小曽根はそんな「気」を感じた。「目に見えない喜びを感じ取る感性を、地位や財産が邪魔しがちだが、みんなが被災したことで、それらが取り払われたのかもしれない」と振り返る。小曽根は、地元の大槌高校吹奏楽部員とも何度か共演した。影響を受けた生徒もいる。
打楽器担当の佐々木穂華(20)は、NNKと演奏して初めて小曽根のピアノを聴き、「周囲を大事にする優しい音だ」と引き込まれた。現在は昭和音大に進学、楽団で企画をする仕事に就きたいと思っている。5月には小曽根が出る演奏会の手伝いをした。
「震災がなければ会えなかった人。今度は仕事で関われるようになりたい」(東野真和)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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