9月2日 平成とはプロローグ【4】

朝日新聞2017年8月31日3面:女性進出 山は動いたのか 社会部 河原理子(56) 明治生まれの祖母は「女性だから上の学校に行かせてもらえなかった」と言った。昭和一ケタの母は、戦後の学校で男女平等を習い、参政権を行使した。平成の女性と社会は、何が変わったのだろう。
女性増えた国連「日本の裏返し」 この30年ほどで、女性比率がぐんと高くなった分野がある。国連で働く日本人のうち女性が占める割合だ=グラフ。外務省によると、全体で6割に。たとえば国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)では、7割を占めている。国連機関の場合、ポストが空けば公募して、性別、地域などの多様性に配慮しながら選考することが多い。ジェンダーバランス是正にも力を入れてきた。それでも組織任せでは男女半々が実現しないため、共通の行動計画を実施中だ。
1992年から99年までユネスコ人事局長を務めた広瀬晴子・東工大特任教授(71)は、他の国連機関の人事局長らの間で「職員を採用するなら日本人の女性は狙い目」と言われていたと話す。なぜ女性?
「男性は経験を積むと、日本の企業に引き抜かれるなど変えることも多かった。当時、女性は帰国して働く道がほとんどないし、腹の据わった人が多かった」国連組織は働きやすいという。子どもが小さいため週4日勤務(給与は8割)を選ぶ職員もいたし、産休・育休中は臨時に別の人を雇える。長時間働く働きぶりではなく成果が求められる、別の厳しさがあった。
女性比率が高くなったのは「日本社会が男性を大切にしてきた裏返しではないか」と広瀬は見る。東京にある国連広報センター所長の根本かおる(54)は、放送曲記者時代に留学先で国連職員に接し、ネパールで難民支援の現場を見た衝撃から、96年UNHCRに転じた。
職場は多様性のるつぼ。「人間は同じではないことがスタートラインだった」日本の放送局時代は、行く先々で「紅一点」。多数派に合わせる同調圧力を感じたという。女性が多ければ違う結論だろうと思うことも良いにくかった。切り出すには、意をくんでもらえるように言葉を選ぶテクニックがいった。
しかし、難民支援の仕事では「女性で得したことはあっても、損したことはない」と言い切る。「難民の半数以上は女性と女児。性暴力や性的搾取の被害を女性の方が吸い上げやすい」
 男女半々の町議会で改革進んだ 女性比率で、まだまだなのが、政治分野だ。平成は、あのセリフとともに始まった。「山が動いた」1989(平成元)年、都議選に続く参院選で与野党逆転、女性が過去最多の時の2倍当選した。「山が・・」は、社会党委員長の土井たか子が口にした、与謝野晶子の詩である。けれども、変化は期待よりずっと遅かった。
平成元年に参院の女性議員は初め1割を超えた。2割を超えたのは昨年だ。もし30年で1割ずつアップするなら、男女半々になるのにあと90年ほどかかることになる。衆院はさらに少ない。7月1日現在の世界の国会(下院)女性比率ランキングで、日本は9.3%で164位。最低は0人のカタールなどで190位だ。
「男女の地位は平等になっていると思いますか」と7分野について聞いた内閣府の昨年の世論調査でも、平等だと思う人が最も少ないのが「政治の場」(18.9%)。最も多いのは「学校教育の場」で66.4%。東海大教授の大山七穂(59)は、「山が動いた」選挙を見て、女性と政治を研究テーマに決めた。
「なぜ女性議員を増やす必要があるの?」と問われるが、「女性の過小代表性」の問題があると言う。世論調査を見ると男女で関心度が違う項目がある。どちらかといえば女性は医療、高齢者、子育て、物価などを、男性は行財政や外交を重視する。「男性ばかりの議会では、男性は気がつきにくい問題が議題になりにくかったり、後回しにされたりする。女性議員が増えると、それまで政治問題化されなかったことがまな板の上にあげられるようになる」
平成の時代、女性が過半数の町議会も生まれた。神奈川県大磯町議会は、2003年に男女同数となり、それからは半々か女性が多いか。現在、女7男7.自然豊かなベッドタウンで、市民活動が盛んだ。男女半々になった03年から、議会中継や、全議員の議案賛否の公表など、議会改革が進んだ。町役場1階の町民情報コーナーに、政務活動費の収支報告書の写しが置いてあり、領収書の写しまで誰でも見ることができる。
渡辺順子町議(71)に聞くと、これまでのやり方を変えることに女性議員は抵抗がなかった、と言う。渡辺は、子育てするうちに環境保護にかかわるようになり、03年に初当選した。同年初当選した高橋英俊町議(58)は「私は建設、下水道などハード面に関心が向くけど、女性議員は子育て、福祉、教育などをとり上げることが多い」。子育て政策は、大磯の住民を増やすために自分も勉強していきたいという。
ただ、2人とも「女性が多い議会は何が違うのか」との問いにはとまどいを見せた。「どんな人がなるかによって違う。女性議員もそれぞれ個性的」と渡辺。
高橋は「男か女かより、その人がどうやって生きてきてここにいるかということが大切ではないか」。その当たり前の答えに、男女とも一定数いるからこそたどりつけるように、私には思える。(敬称略)


社会って、どこ? へそ曲がりゆえ、「女性の社会進出」という言葉を見ると、「社会って、どこ?」と考える。短い言葉で伝えるには仕方ないときがある。でも「企業で働く女性が増えた」ことを示すにすぎないような場合もある。社会は、女性も子どもも病人も、いろんな人がいる場所のはず。だからこそ、公の意思決定の場に、女性が一定割合いないと変だし、その場にいない人たちのことを想像する力が、いる人には、求められる。
進出を待つらしい「社会」の方を、ほどいて、開いていきたい。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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