9月17日 藤田晋のメディア私評

朝日新聞2019年9月13日13面:藤田晋1973年生まれ。24歳で起業したサイバーエ-ジョントの社長。テレビ朝日と設立したAbemaTVの社長も務める。 ニュースの引力 伝える工夫が価値につながる この夏は、私たちが運営するインターネットテレビ局「AbemaTV」というメディアにとって、日々の「ニュース」は人々を強く引きつける「キラーコンテンツ」なのだと改めて実感しました。その一つが、お笑いコンビ「南海キャンディーズ」の山里亮太さんと俳優の蒼井優さんの結婚です。6月5日の朝にスポーツ新聞が特ダネで報じて関心が高まり、半ば「ウソだろう」と思っていたら、夜に二人そろって会見しました。AbemaTVで会見直後にノーカットで流すと、アクセスはどんどん増えて、1週間あたりの視聴数(WAU)は初めて1000万を超えました。この数字は、2016年4月の開局時に掲げた目標で、この結婚会見というニュースが原動力となって到達したのです。7月20日には、お笑いコンビ「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんと、「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮さんが振り込め詐欺グループの宴会に出てお金をもらっていたことを謝罪する会見を生中継しました。これが視聴数全体を引っ張り、WAUは1330万まんで伸びました。会見は午後3時からだったため、テレビの前にいない人たちも多く、手元のスマホやパソコンで視聴できるインターネットテレビの強みが発揮できました。加えて、謝罪会見とはいえ、芸人の話術はさすがで、思わず引き込まれました。AbemaTVの視聴数が多かったため、この会見は私たちが開かせたのではないかと疑われたほどです。もちろん、そんなことはありません。たまたま芸能ニュースが続きましたが、過去にも飛び抜けた視聴数が取るのは芸能に限らず、ニュースが多いのです。AbemaTVのスマホでのトップページはニュースチャンネルにし、このメディアの中心に据えています。毎日決まった時間にニュースを流し、注目される会見があれば生中継することで、「何か起きたら、とりあえず開くメディア」になるのが狙いです。ニュースを入口にして視聴習慣をつけ、ドラマやバラエティー、スポーツなどの番組も見てもらい、結果的に有料会員になってくれればと事業として成り立ちます。そのためにも、ニュースに力を入れ続けることがメディアの価値を上げると考えています。「ニュースが入り口」という考え方は、インターネットのポータル(玄関)サイトでも同じです。みんながパソコンでインターネットを使い始めたころ、多くの人たちがとりあえず「YAHOO! JAPAN」を開いていたのは、トップページにニュースがあるからでした。ざっと見てから、検索したり、株価を見たりと自分のしたいことをするのが習い性になっていました。スマホの時代になって、スマートニュースやグノシー、LINE、各新聞社のニュースサイトなどへの分散が進んでいますが、どれもニュースが核になっています。このようにスマホのおかげで、以前よりニュースに触れる機会は圧倒的に増えていて、ニュースの価値は上がっていると思います。しかし、若者を中心にせわしないので、見出しだけ見て中身を読みません。一つ一つのニュースの理解は浅くなっていて、送り手側からすれば、きちんと伝わっていないという問題があるのです。1カ月ほど前のことです。社内でエースとされている若手の社員たちと食事していたとき、新聞やビジネス誌でも盛んに取り上げられていたあるニュースに水を向けました。そのことをどう捉えているのか意見を聞きたかったのですが、目の前の社員が「へえ~」。なんと、何が問題なのか分からなかったのです。将来有望だと思っていた若手でさえこんなレベルなのかと衝撃を受け、すぐ手を打ちました。それは「新聞の読み会」です。フェイスブックにグループを作り、各自そこに朝、新聞を読んで気になったニュースとそれに対する意見を書き込むようにしました。すでに部署ごとに20以上のグループができました。とんちんかんな意見を書いていた人たちは、さすがに恥ずかしいと思い始め、今は必死に新聞を読んでいます。私はずっと新聞を読んできましたが、意見を書くようになってからは一層よく読むようになりました。刻一刻と出てくるコンテンツはニュースしかありません。ツイッターの書き込みのように次々と新しいものが出てくるので、ネットには向いているコンテンツだと思います。その価値をさらに引き上げるには、内容がより伝わるように手立てが必要です。そのためには受け手にもっとかかわっていく必要があるかも知れません。

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