9月16日 人生の贈りもの 柄本明「4~5」

朝日新聞2019年9月13日26面:小劇場に魅せられ会社辞めた 高校卒業後は、おじさんのコネで電電公社に就職しようと決めていました。1次が通って、入れると思っていましたから、落ちて。あわてていろいろ調べて、ちっちゃい精密機械の商社に入りました。カールツァイスの製品なんかを扱っていて。営業で、成績はよかったんです。大きく売れたこともあって。現地の支社の人ががんばっていたんだと思うんですけど、たまたまいいタイミングでそこに行って。目標の300%達成とか。《そんなころ小劇場演劇に出会う》 早稲田小劇場。1968年です。知り合いに連れられて見にいったら、楽日で、満員で入れなくて、「待っててくれたらもう1回やりますよ」って。2階が劇場で、1階がモンシェリっていう喫茶店で、僕は東京の人間だけど、どういうわけか喫茶店に行かなかったんだな。たばこの煙がもうもうとして、ジャズが流れていて、もうお客さんいっぱいですよ。ヒッピーとか、アングラなファッションで、自分はサラリーマンで、ネクタイして、七三分けで、すごく恥ずかしくてね。「どん底における民俗学的分析」という作品です。おもしろかったですね。笑えた。俳優が歌舞伎の六方のような所作をしたり、おかしな姿を登場したり。くっだらねーなと思って。今まで見たものと全然違うんです。いや、「くっだらねえ」というのは、僕のなかでは最上級の言葉なんです。会場は笑ってなかったんですね。分かんないんでしょうね。風体はね、すごくアカデミックなんですけど、そのアカデミックさに笑ったんでしょうね。ようするに、早稲小のやっていることを、分からない人は「芸術」だなんて思っちゃうんだよね。その「芸術」を、思いっきり、たたきつけて見せているような。kんんもんくだらねえんだって。《そして会社までやめてしまった》 なんかね、そうしたかったんでしょうね。(聞き手・星賀亨弘)

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