8月17日 予防医療Ⅱ「下」

朝日新聞2019年8月15日4面:医療費削減ばかり求めない 医療費を減らし、国民健康保険加入者の生活習慣病の予防に取り組んできた広島県呉市。その効果はどれほどだったのか。財政面で圧倒的に大きいのは、ジェネリックへの切り替えだ。2008年度のスタートから約10年、市から通知を受けた人の8割がジェネリックへ切り替え、累積で16億円超の薬剤費を削減できたという。「糖尿病性腎症の重症化予防」はどうか。実は呉氏は「予防事業」については金銭的な効果額を算出していない。公にさているのは人工透析の導入者数の推移だ。事業開始の10年度から12年度まで、プログラム参加者から透析に移行した人数はゼロ。これが、「予防で透析を食い止めた」と受け止められ、全国的な注目を集めるきっかけになったようだ。ただその後は、プログラムを受けた人からも透析に移る人が出始める。17年度までの参加者(計416人)のうち、透析移行者は計9人いる。国保加入者全体に占める人工透析患者の割合は、10年度の0.273%から、17年度は0.208%に下がった。ただ、呉市の担当者は「人工透析者の減少がプログラムの成果と言い切るのはこわい」という。医療の進歩などの要因も影響しているからだ。また、75歳からは国保から後期高齢者医療制度に移るので、その後に透析導入になってもカウントされない。呉市の取り組みには、どれだけお金がかかるのか。17年度を例に例に見ると、医療費の分析を担うデータホラゾン社(DH社)への約5千万円、その子会社で「糖尿病性腎症の重症化予防」や他のプログラムを運営するDPPヘルスパートナーズ社への約1600万円を中心に、約6900万円が委託費として支出だれている。ただほとんどは、県や国からの交付金で賄えるという。
DH社によれば、「糖尿病性腎症の重症化予防」のプログラムのコストは参加者1人あたり25万円前後。中本克州元副市長は言う。「市民が透析に入らず、QOL(生活の質)を維持できるというのが一番の目的。医療費ばかり求めるとおかしなことになる」。そして「透析の人から『迷惑かけているのかな』と言われることもある。そうじゃない。ムダや不正はいけないが、要るものは要るんです」と強調する。取材を通して感じた呉市の強みは、信頼に裏打ちされた自治体や医師会、看護師らのネットワークだ。「呉市の取り組みが評価に値するとすれば、市民の健康増進という共通目標のもと、関係者が連携できたことに尽きる」と、呉市福祉保健課の管理栄養士、前野尚子氏は話す。この「物語」をコピーするのは簡単でない。ある関係者は言う。「表では言いませんが、呉をベストプラスティクスとして他に同じことをやらせようというのは無理。地域の資源が違うから」(編集委員・浜田陽太郎)

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