8月15日 「父子だけ帰省」してみると

朝日新聞2019年8月12日20面:妻も親も自分も気持ちがラクに お盆は一家そろって故郷に帰省ー。そんな恒例の風景の一方で、父親と子どもだけで父親の実家に帰る「父子帰省」が注目されつつあります。なぜでしょうか。「自分の実家へ妻を連れて帰省すると、両親も妻も気を使う。誰にも気を使わせない父子帰省はよかったです」会社員の男性(29)は昨年の夏、当時1歳だった一人息子と、自宅のある埼玉県から両親の住む富山県へ初めて「父子帰省」をした。共働きの妻は資格試験に向けた勉強中。全員で帰れば費用もかさむ。そうしたことが理由だった。ただ、父子帰省の方が気持ちがラクだと思ったのも事実だ。両親は一家を迎え入れることに気を使う。一方、妻は男性の実家で「手伝わなければ」と気負う。男性自身は、両親と妻の間で気をもみ、モヤモヤする。父子帰省ならば、そうした状況にならずに済む。息子は実家の階段を気にいって上ったり下りたり。落ちるのではないか、と目が離せなかった。「『両親に子どもを預け、羽を伸ばす』という考えは甘かったです」。それでも、両親と海や動物園、カフェなどに行き、休みを満喫できた。振り返ってみると、父子帰省をしたのは、妻も自分も仕事や子育てに追われ、ひと息つく間もない日々が続いていた時期でもあった。妻からは、1人の時間が確保できたことを感謝されたという。今年5月の大型連休は、父子と母子でそれぞれの実家に帰省した。「年に1回そって顔を見せれば、あとは状況に合わせて柔軟に帰省すればいいと思います」父子帰省は、1年ほど前からSNSなどインターネット上で目立つようになってきた言葉だ。背景の一つに、夫の実家への帰省に対する、妻の気疲れもありそうだ。ソニー損保が2017年に既婚者788人にインターネット調査したところ、「配偶者の実家への帰省」について、57%の女性が「憂鬱」と感じていた。これに対し、男性は25%にとどまった。 安全確保は必須 試される育児力 父子帰省は、父親の育児力が試される場でもある。関東に住む40代主婦は、自身が風邪を引いた時、夫が小学生の娘と父子帰省した。ありがたかったが、「娘が風邪を引かないよう、夫が娘の体調を管理できる。義理の両親の運転は大丈夫か。気が気ではなかった」。父親は母親に比べ、子供の事故防止に関する意識が低いというデータもある。消費者庁が昨年1~2月に、徳島県内の保護者を対象に行った調査では、「ため池、排水溝など水のある場所で子どもが遊ばないように注意する」と回答した父親の割合は母親より20ポイント程度低かった。「誤飲のこそれがあるものは子どもの手の届かないところに保管する」は、父親が10ポイント以上下回った。普段子どもがいない帰省先には、たばこが無造作に置かれていたり、蒸気の出る炊飯器が床に置かれていたすることも。思わぬ事故が起きるおそれもあり、消費者庁が注意を促している。自身も父子帰省を経験した関西大学教授(ジェンダー論)の多賀太さん(50)は「子どもの面倒をみることができて、安全も確保できる。それが父子帰省する父親に最低限必要な条件」と話す。(高橋健次郎)
親子関係それぞれケア 筒井淳也・立命館大学教授 「父子帰省」とはどんな現象なのか。家庭社会学が専門で、「結婚と家族のこれから」(光文社新書)などの著書がある立命館大学の筒井淳也教授に聞いた。帰省は、親子関係のメンテナンス手段です。家制度では、「嫁」が「旦那」に代わり、義理の父親や母親らとの関係を維持してきました。その名残で妻側が多くを担ってきました。父子帰省は、親子関係の「個別化」と位置づけられます。自分の親との関係は自分でケアする。義理の親に対するメンテナンスは「自分でやってください」という流れです。男性の子育てが一般化する中では、当然の流れだと思います。それに、互いの実家に帰省するとなるとお金もかかります。「個別化」された帰省は、経済的でもあります。高齢化と少子化で、親子関係はより緊密になります。今後「個別化」は進み、親子関係メンテナンスする手段としての帰省はより重みを増していくと思います。

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