8日 患者を生きる 永六輔の大往生

朝日新聞2017年4月5日29面:連れて帰る娘の決断 背中の痛みを訴えるようになった永六輔さんは2016年1月上旬、自力で立つことも、歩くこともできなくなった。パーキンソン病の主治医で国際医療福祉大三田病院の横地正之さん(75)を受診し、背中のMRI検査をした。痛みの原因は、持病の前立腺がんが背中の骨に転移しているためだとわかった。
手術が必要になり、その日のうちに入院した。ただ、1月下旬には、大事な友人の1人、黒柳徹子さんが司会を務める「徹子の部屋」の40周年記念に、大橋巨泉さんと出演する予定があった。
長女の千絵さん(58)と次女の麻理さん(55)は、出演は難しいだろうと考えたが、永さんは「3人で約束したんだから、どうしても行きたい」と訴えた。医師も「ご本人が行きたいというなら、ぜひ、行かせてあげたい」と、永さんを後押しした。
1月下旬の収録は、車椅子に乗ったまま痛みを押して出演した。テレビ局を後にすると、その足で前立腺がんの主治医がいる大学病院へ転院し、2月上旬に背中の骨を固定させる手術を受けた。術後に背中の痛みがなくなると、「父とよく行った店の穴子ずしが食べたい」などと言っては、病室で楽しんだ。
だが、退院を控えた3月、食べ物などが過って気管に入ってしまうことで起こる誤嚥性肺炎になった。肺の炎症が治るまで絶食することになると、家族の目からもみるみるやせて衰弱した。
肺炎が治った後も、歯茎がやせて入れ歯がしっくりせず痛み、思うように食事が取れなくなった。胸から官を通じて栄養を取るようになった。千絵さんと麻理さんは、退院後の生活を見据えて、高齢者の介護施設を見に行った。24時間、目が行き届く介護を受けられるのは、本人にとってだけでなく、家族にとっても安心だろうと考えた。一方で、以前、自宅で転倒して入院した際、せん妄が出たことを思い出した。千絵さんは「やっぱり、父は家で過ごしたいと思うはず。私が連れて帰る」と言って、自宅で療養することを決めた。
4月中旬に退院することが決まると、家族は泊まり込んで介護する計画を立てた。(宮島祐美)

 

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