7月21日 オトナになった女子たちへ 伊藤理佐

朝日新聞2019年7月19日25面:ポケットいっぱいのベスト 「本当はアレが着たい」い、言うのである。顔を赤らめて。ヨシダサンが。アレとは、ポッケのいっぱいついていたベスト・・と言ったら伝わるのだろうか。ほら、外ポケット、内ポケットがたくさん、ハンカチティッシュ、鍵、小銭、入るなら小さい水筒、猟師なら鉄砲の弾、釣り人ならミミズ? たいへん便利そうなアレだ。しかし、わたしは言いたい。「そんな便利になりたいかっ」と。山があったら叫びたい。「まだ、早い!」と。コダマよ、リフレインをたのむ!と。アレを着て、手ブラで歩きたいそうです。山ならいい。川でもいい。海でもいい。ただ、この東京の住宅街の道は、どうだろうか。いや、わたしの感覚が古くて、もうすでに原宿でハヤっているのかもしれない。しかし、「原宿のことは知らん!」と、今度は海に叫びたい。本当に知らない。布地は網々いいらしい。夏バージョン。忍者みたいなヤツか。鏡を見たら自分、三白眼だった。
岩手の父、母が着ている。二人はかなり本格的なウォーキングをするので、とても似合っている。長野の父の着ている。農作業をするのでとても似合っている。年代を変えないと。生きる場所を変えないと。で、まだ早い、と。そんな時に、絵本を紹介する雑誌で、かわいいカンガルーさんがそんなベストを着ているイラストを見た。読みかけの本、クッキー、しゃぽん玉、花の種、思いでの写真・・かわいいものをいーっぱい、ポケットに入れて朝のお散歩をしていた。すごい。完っ璧に着こなしている。カンガルーさんの目はキラッキラだ。あああ、そうか。ベストは「便利」じゃなくて「メルヘン」だったのか。メルフェン。ヨシダサンはポッケに何を入れるのか。ウルトラマンは確実だな。ゴジラ入るかしら。内ポケットには何の文庫本? お気に入りの手拭いは? あれ? 家族写真の類は入れてくれるかしら。思いでのアレは・・なんか別の心配が出てきた。鏡を見たらまた、三白眼だった。(漫画家)

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