7月18日 財政難でクラウドファンディング

朝日新聞2019年7月15日30面:緊急病院の人件費まで■継続性に課題も 「病院だけではもう限界。安全に患者の治療を続けるために応援をお願いしたい」大阪府三島救命緊急センター(同府高槻市)は6月、非常勤の医師や看護師5人程度を確保するため、人件費をインターネットで募るクラウドファンディング(CF)を呼びかけた。 7日で2千万円 賛同の輪は瞬く間に広がり、わずか7日間で目標の2千万円を達成。「最後のとりでとして、なくなっては困る」。寄付サイトには多くの励ましの投稿がされ、寄付は現在、3千万円を超えた。医療機関が設備費などを求めてCFを活用する例は以前からあったが、人件費までCFで賄おうとする試みは異色。首都圏にある救命救急センターの男性医師は「経常的に発生する人件費までCFの資金を充てるとは」と驚く。三島救命緊急センターは、国や自治体から「重篤な患者を24時間体制で必ず受け入れる」という公的な役割を任された3次救急機関。開設当初は遠方からも重篤患者が搬送され、受け入れ数は年々増加。だが、他の医療機関でも態勢が整い、現在の患者数は年900人ほど。1人も搬送されない日があっても、救命緊急センターとして態勢は常に整えておかなければならない。患者が減れば収入も減る。2010年度に14億円近くあった医療収入は17年度には10億円弱まで減少。支出は18億年ほどで、不足分は国や大阪府、地元の3市1町からの補助金に頼る。10年度に27人いた医師は14人に。搬送要請があっても、やむを得ず受け入れを断る事例も出てきた。するとまた収入が減り、さらに医師を雇えなくなるー。そんな悪循環を断ち切るため、考えたんがCFだった。同センターは施設の老朽化などのため、22年度に市内の大阪医科大学内に移転する。それまでの3年間の経営安定の資金とする計画だ。運営する公益財団法人の法幸貞次事務局長は「不安もあったが、多数の励ましで職員もモチベーションもあがった」。財政難に直面する「公」の資金を調達する新たな選択肢として、CFは存在感を増している。
 注目が薄れ激減 だが、CFはあくまで善意頼み。急激な寄付減少に直面することもある。岐阜県南西部の池田町じゃ16年度、初めてCFに乗り出した。高校生の通学などに不可欠な「養老鉄道」の廃線を防ぐためだ。元々は大手私鉄・近鉄の一路線だったが、毎年約10億円の赤字が発生。沿線の3市4町は穴埋めのために年間約3億円を拠出し、同町も約3千万円を負担してきた。その後、近鉄が鉄道施設の管理から撤退したことなどで、沿線自治体の負担は増え、同町の負担も3倍の約1億円になった。人口は減っていき、税収増も見込めない。活路を見いだそうと頼ったのがCFだった。初めて実施した16年度は、地元だけでなく全国の鉄道ファンからも支援があり、計1千万円以上が集まった。「非情にありがたかった」。同町の小川孝文企画課長は振り返る。しかし翌年度、継続的に資金を獲得できると期待して実施した2回目に寄せられたのは約350万円。3分の1に激減した。小川課長は「当初は鉄道を守るCF自体が珍しくて注目されたが、その後似たようなCFが広がり、目新しさが薄まったのか・・」。ただ、鉄道の維持は町にとって死活問題だ。同町は、再び注目される仕掛けを検討して、今年もCFに取り組む予定だという。(有近隆史) やみくもな依存は危険 奥山尚子・大阪学院大学准教授(公共経済学)の話 財源に限りがある国や自治体では対応しきれない公共サービスがある中、少額でも多くの人がすぐに寄付できるCFという基盤ができたことで、民間の資金が社会を支えるという動きが活発になっています。どう使われているかが見えにくい税と異なり、CFは使途が明確で、支援する側も当事者意識や納得感を得やすいというメリットがあります。一方、CFは目立つプロジェクトに資金が集中しやすく、注目されない分野には資金が集まらない事態も発生しうる。資金調達の持続性に課題もあります。公がやみくもにCFに依存していくのはリスクもあり、私たちも注視していかなければなりません。 クラウドファンディング ある目的を達成するため、インターネットなどを通して不特定多数の人から資金を集めることで、「crowd(群衆)」と「funding(資金調達)」を組み合わせた造語。出資の返礼があるものもあり、モノやサービスが提供される「購入型」、税制優遇を受けられる「寄付型」などがある。

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