7月13日 原発再稼働のいま「1~5」

朝日新聞2019年7月8日夕刊7面:新基準6年審査は進んでいるの? 東京電力福島第一原発事故後につくられた原発の新規制基準が施行されて、8日で6年になった。これまでに16原発27基が審査を申請し、8原発15基が新基準に適合すると認められた。このうち5原発9基が再稼働したが、今年、新たに再稼働を予定する原発はない。原子力規制委員会の審査会は計740回を超えた。どう進んでいるのか。福島の事故では、地震や津波で原子炉を冷やす設備が使えなくなり、核燃料が溶け落ちメルトダウンが起きて、大量の放射性物質がまき散らされた。当時の規制は、こうした過酷事故を想定せず、対策を「電力会社まかせ」にしていた。新基準は、過酷事故が起きることを前提とする。万が一の時でも被害を抑えられるよう、複数の電源や冷却設備を設ける安全対策を義務づけた。地震や津波などの自然災害への備えもお厳しくした。新基準を満たさなければ再稼働はできない。審査には大まかに三つの段階があり、安全対策の基本方針が新基準に適合しているかをみる最初の段階が最大の焦点だ。これをもとに許可が出され、設備の詳しい設計や、運転や事故時の対応手順の認可に進む。審査が先行したのは、加圧水型炉(PWR)というタイプ。福島第一と同型の沸騰水型炉(BWR)より原子炉格納容器のサイズが大きく、安全対策がとりやすかったためだ。電力各社は新基準が施行された2013年7月、6原発12基の審査を申請した。それらはすべてPWRだった。九州電力川内1号機(鹿児島県)を皮切りに、九電の計4基、関西電力の4基、四国電力の1基が新基準に適合すると認められ、再稼働した。BWRは申請が遅れた。理由の一つが、福島の事故を教訓に設置が義務づけられた「フィルター付きベント」だ。事故で格納容器内の圧力が高まったとき、破裂を防ぐために蒸気を逃す装置だが、放射性物質を意図的に外部に放出するだけに、地元自治体の理解を得るのに時間がかかった。審査も慎重だった。東電柏崎刈羽6.7号機(新潟県)がBWRで最初に新基準を満たすと認められたのは17年12月。九電川内から3年あまり遅れた。ただ、再稼働に必要な地元の同意を得る見通しは今も立つていない。新潟県は独自に進める福島の事故の検証を終えた後に判断する考えで、必要な安全対策工事も20年末までかかる予定。続いて新基準を満たした日本原子力発電東海第二(茨城県)も、地元自治体と原電の間で、安全協定にある再稼働の「事前了解」をめぐる会社の食い違いが表面化。今春、原発がある東海村の山田修村長は「自治体と事業者の信頼関係が崩れている」と語った。工事も21年3月までかかる。審査中の12基では、東北電力女川2号機(宮城県)と中国電力島根2号機(島根県)が先行するが、他の10基はまだ「序盤」。次に再稼働しそうなのは、来年5月に工事が完成する予定の関電高浜1号機(福井県)だ。(福地慶太郎)
朝日新聞2019年7月9日夕刊7面:長引く審査 地震の想定が原因なの? 6年前の新規制基準施行にあわせて審査を申請した「第一陣」の6原発のうち、まだ審査が続いているところが一つだけある。北海道電力泊原発だ。取り残されたのは、地震の想定が難航を極めているためだ。原子力規制委員会の審査は、過酷事故にも対応できる施設の安全対策をみる審査会合と、地震や津波、火山噴火など自然災害の想定は、施設の安全対策の前提となるため、審査全体のゆくえを左右する。自然災害の中でも「一番難しい」とされるのが地震だ。科学的な根拠を集めるためボーリングや掘削などの大がかりな調査が欠かせない。不確かさをどこまでみるのか判断も慎重さを要する。更田豊志委員長も「こんなに時間がかかるとは思わなかった」と明かす。焦点の一つは、活断層が動くことによる地面のずれだ。原子炉建屋などの重要施設の真下にあると、動いたときに施設が壊れて事故につながりかねない。活断層の存在を否定できなければ、「立地不適」とみなされ、廃炉を迫られる。その可能性が疑われているのが、日本原子力発電敦賀(福井県)と北陸電力志賀(石川県)だ。審査に入る前、地質の専門家らでつくる会合で、重要施設の真下に活断層がある可能性を指摘された。規制委の審査では、この結論を「重要な知見」として扱う。2社は、反論を続けている。もう一つが、最大の地震の揺れの想定(基準地震動)だ。電力会社は、海溝型地震、震源がどこか分からない地震もふまえて試算する。より強い対策が求められ、工事の費用も膨らむ。審査を通った原発は、ほとんどが基準地震動の大幅な引き上げを迫られた。九州電力の玄海(佐賀県)、川内(鹿児島県)は、540ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)から620ガル、といった具合だ。電力会社は下限を探ろうとするが、規制委は不十分であれば認めない。結果として審査は長引く。審査が続く原発のなかには、南海トラフ巨大地震の想定震源域に立地する中部電力浜岡(静岡県)など、基準地震動を決めるのが難しいものが多く残る。
泊の場合、今年2月になって規制委が、敷地内の断層を「活断層の可能性が否定できない」と判断した。重要施設の真下ではないので立地不適とはならないが、基準地震動の引き上げを求められる可能性が出てきた。北電は反証を試みるが、覆すのは難しそうだ。その断層については、活断層を否定した北電の主張がいったん認められ、施設の安全対策の審査も進んでいた。ところが、新生から4年たった2017~18年、主張の根拠だった火山灰の地層がないことがわかった。北電の調査が不十分だったのだが、規制委も指摘が遅くなったことに「反省点がある」と責任の一端を認める。(川田俊男)
朝日新聞2019年7月10日夕刊9面:テロ対策施設ができないと運転停止? 新規制基準のもとで、関西、四国、九州3電力の5原発9基が再稼働したが、いずれも来春から順次、運転停止を迫られそうだ。設置が義務づけられたテロ対策施設の完成が期限に間に合わないからだ。原子炉建屋などが航空機によるテロ攻撃を受けても放射性物質が大量に漏れないようにするための施設。建屋から離れた場所で操作できる緊急時制御室のほか、原子炉を冷やすための発電機やポンプなどを置く。中枢機能をもう一つ造るようなもので、1基あたり500億~1200億円かかる。テロ対策施設は、欧米の規制を参考に施設が義務づけられた。大規模な工事が必要なため猶予期間が設けられ、当初の期限は新基準施設から一律5年(2018年7月)だった。ところが、テロ対策施設の設計の前提となる原発本体の審査が長引いたため、規制委は規則を改正。「安全対策の詳細設計の審査を終えてから5年」に延ばした。期限までに完成させなければ、いったん新基準に適合すると認められた原発でも「不適合」となる。そうなれば、規制委は原子炉等規制法に基づいて運転停止を命じることができる。「期限に間に合わない。対応を検討してほしい」 今年4月の規制委の会合で、電力会社の幹部らが、工事が大幅に遅れていることを理由に期限をさらに延ばすよう求めた。3電力の6原発12基で期限を1~2.5年ほど超える見通しを明らかにした。その1週間後。規制委は「工事が著しく遅れる自然災害や経済状況の悪化はなかった」として先延ばしを認めず、停止を求める方針を決めた。更田豊志委員長は工期の見通しの甘さに加え、国に対する姿勢の甘さも挙げた。「訴えれば何とかなると思われたとすれば、大間違いだ」。来年3月が起源の九電川内1号機(鹿児島県)から順に止まることが確実になった。再稼働の準備を進めている原発にも影響が及びそうだ。たとえば関電高浜2号機(福井県)は21年6月に期限がくるが、工事は約2年半遅れる見通し。関電の計画通り21年1月以降に再稼働したとしても、数カ月で止まることになる。23年1月の再稼働をめざすとされる日本原子力発電東海第二(茨城県)の場合、23年10月に期限がきるが、原電は「建設中」として工期の見通しすら示していない。設置が遅れるのは、各社がテロ対策に積極的でないから、という指摘もある。だが、テロ対策施設はテロ以外の事故でも使うことができる。規制委も今月、各社に対し、積極的に活用するよう求めた。東京電力福島第二原発の事故を検証した国会事故調査委員会の報告書によると、米国は01年の同時多発テロ後、国内の全原発にテロ対策を義務づけた。だが、日本の旧原子力安全・保安院はこうした取り組みの導入に消極的だった。事故調は、対策を求めていれば、事故は「防げた可能性がある」と指摘している。(福地慶太郎)
朝日新聞2019年7月11日夕刊9面:原発再稼働のいま 原子力規制委員会の検討チームが8日にまとめた計算方法の見直し案に、電力会社が神経をとがらせている。原発で想定される最大の地震の揺れ(基準地震動)の引き上げにつながるもの。正式決定されれば、再稼働した原発も計算をやり直し、耐震不足になれば追加の対策工事をしなければならないからだ。この規制強化は、最新の知見で引き上げた「ハードル」を既存の原発にも義務づける「バックフィット制度」に基づく。6年前、原子炉等規制法を改正して導入された。東京電力福島第一原発事故では、津波の想定が従来より高くなる新知見があったのに東電が対準で運転していた原発が、新基準に適合するまで再稼働できないのも、この制度があるから。なければ、運転を続けながら審査や工事ができる。規制委が新たな安全対策が必要と判断し、新基準を引き上げれば、全国一律に適用される。この6年間で、新知見を反映させる新基準の開成は10を超える。その一つが、東電が柏崎刈羽6.7号機(新潟県)で自主的に追加した新しい安全設備。事故時に原子炉格納容器内の圧力が高まって壊れるのを防ぐため独自に考案した。規制委は効果的な対策と認め、他原発にも義務づけた。今年2月には火災対策を強化。原子炉を冷やす設備や放射性廃棄物がある部屋に、煙や熱の感知器を追加で設置するように求めた。真剣値をもとに、自然災害の想定を原発ごとに引き上げて、審査のやり直しを求めるケースも相次ぐ。関西電力は福井県にある高浜と大飯、美浜の3原発について、大山(鳥取県)の噴火で敷地に降る火山灰を厚さ10㌢と想定し、規制委も認めた。だが、その後に見つかった論文を踏まえ、規制委は従来の研究よりも大規模な噴火が過去にあったと認定。関電は厚さが約2倍になると再評価した。規制委は先月、関電に想定を引き上げて審査を受け直すよう命じた。昨年12月にインドネシアのスンダ海峡で起きた津波は、関電高浜の津波対策に影響した。火山噴火による山崩れが原因とみられ、津波警報が出されなかったが、関電は津波警報を前提に対策を定めていたためだ。規制委は今月、審査をやり直す方針を決めた。上乗せされた基準を満たさなければ「不適合」となり、規制委は運転停止を命じることができる。だが、止めた例はない。緊急性や重大性によって一定の猶予期間を設けているからだ。対策には時間がかかるのに、そのつど停止させると、電力会社が新知見を見つけても、停止を避けるために声を上げなくなりかねない、との考えが背景にある。火災感知器の場合、1基約1200個を追加するのに5年ほどかかると電力会社が主張。規制委も受け入れた。更田豊志委員長は「一定の猶予は必要。緊急性があれば止める」と強調する。(福地慶太郎)
朝日新聞2019年7月12日夕刊11面:運転期間の「40年ルール」って何? 東京電力福島第一原発の事故後、54基あった月報のうち21基が廃炉やその方針を決めた。これを促したのが、原子炉等規制法の改正で6年前に導入された「40年ルール」だ。事故の教訓から、設計や設備の古い原発に退場してもらおうと、運転期間を原則40年とし、原子力規制委員会が認めれば1回だけ60年まで延長できることにした。過酷事故対策を義務化した「新規制基準」、既存の原発にも最新基準の低壕を義務づける「バックフィット」と並ぶ規制強化の柱と位置づけられた。この三つの制度があいまって、運転開始から40年を迎える原発は、延長か廃炉かの「選別」を迫られることになった。再稼働することは新基準を満たさねばならない。その対策にかかる費用は、再稼働した5原発9基の場合、1基あたり1300億~2300億円。延長しても投資を回収できなければ、廃炉しかない。福島第一を除く廃炉の15基のうち9基は、出力が60万㌔ワットに満たない小型炉。延長による利益が巨額の投資に見合わなかったのだ。福島第二の4基は出力は大きいが、地元の福島県が強く廃炉を求めていた。関西電力大飯1.2号機(福井県)も117.5万㌔ワットと大型だが、原子炉の構造が特殊で、新基準を満たす対策が困難だった。一方、20年の運転延長を申請した関電高浜1.2号機、美浜3号機(いずれも福井県)、日本原子力発電東海第二(茨城県)の計4基は、どれも80万㌔ワットを超える。4基とも延長は認められた。ただ、工事や地元の同意を得る手続きが難航し、止まったままだ。
規制委の審査が長引けば、運転できない期間も延びる。その間も「40年」の時計は回っている。原発推進側からは、運転期間の数え方を見直すよう求める動きが強まっている。経団連は4月、運転していない期間は「40年」や「60年」から「控除すべきだ」と提言した。たとえば10年間止まっていれば、運転開始から50年や70年を期限にせよ、というものだ。5月の衆院原子力問題調査特別委員会dめお、自民党議員から「期間のカウントの仕方はひと工夫あってもよい」「停止期間は除外することも考えられる」といった発言が相次いだ。停止中の原子炉は劣化しない、という理屈だ。規制委は、期間の数え方は法律で決まっていて変えられないと説明。「政策的な部分には踏み込めない」と答弁した。ルールをつくる際、延長は「極めて例外的」(当時の野田佳彦首相)とされた。だが、安倍政権のエネルギー基本計画は、多くの原発の運転延長が前提だ。次に運転40年を迎えるのは、4年前に一番手で再稼働した九州川内1号機(鹿児島県)だ。35年を超えた。これより新しい原発のほとんどは出力が大きく、採算が見込める。再稼働できれば、いずれも延長をめざすとみられる。運転期間をめぐる制度は実質的に、60年運転の収支で選別する「60年ルール」ともいえる。=おわり (川田俊男)

 

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