7月11日 塾・スポーツ、先生はAI

日本経済新聞2019年7月6日夕刊1面:個人の弱点分析、改善促す 人工知能(AI)が教え導く「AIコーチ」が広がってきた。思考パターンや体の動き、弱点を分析し、個々の特徴に合わせて改善法を助言。精度も徐々に向上し、人間のコーチを補助する形で学習塾やスポーツ、職場などで力を発揮し始めている。「ここを意識して」 「やった!」「ここを意識すれば似た問題も大丈夫」。タブレット画面に表れた「目標達成」の文字に、生徒が小さくガッツポーズした。脇に立つ先生と言葉を交わし、すぐ次の問題に挑む。6月上旬の週末、AIホロン神戸学園都市教室(神戸市)で中高生がタブレットに向かって勉強していた。普通の教材と違うのは「アタマ先生」と呼ぶAIの存在だ。解答にかかった時間などのデータから一人ひとりのつまずきを解析し、原因を探る。弱点を克服できるよう遡って問題を出し、講義動画を流す。岡村祐汰さん(16)は「前は自分の苦手がどこか分からなかった。これなら効率よく勉強できる」と笑う。アタマ先生が教えるのは生徒だけでない。「A君は解答時間が標準の倍以上」「B君は2次方程式を解いた。褒めてあげよう」。人間の先生のタブレットでは生徒の状況がひと目で分かる。声をかけるタイミングを教えてくれるのだ。この教材で2週間学んだ生徒は、センター試験の数学の得点が平均5割上昇した。駿台グループやZ会など導入が相次ぐ。教材を手がけるatama pius(アタマプラス、東京・中央)の稲田大輔代表取締役は「基礎学力を短時間で身に付け、余った時間で他の力を伸ばしてほしい」と語る。
職場でも活躍 膨大なデータを分析し、過去の傾向から最適解を導き出すAIは、コーチ役にぴったり。活躍の場は職場やスポーツにも広がってきた。藤田観光が運営する東京ベイ有明ワシントンホテルはビジネスコーチ(東京・千代田)の「AIコーチマイコ」を導入。「仕事のやりがいは?」悩んでいた残業、その後どう?」などキャラクターと対話しながら、AIが社員の考えを把握していく。
宿泊予約担当の中森遼さん(28)は「AIコーチとの対話は新鮮。もっとバリエーションが増えれば面白そう」と話す。上司への相談のきっかけにもなり「若手との距離を通じて縮めるツールとして有効」(桜井浩幸総支配人)。経験知がものをいうコーチングでは、AIは大きな可能性を秘めている。「このプレーは守りの意識が欠けているのでは」ー。選手の動きをAIが解析して、コーチに注意を促す。AIベンチャーのLIGHTz(ライツ、茨城県つくば市)が筑波大学女子バレーボール部などの協力で開発を進めている「ブレインモデル」だ。一つ一つのプレーについて選手が何を考えていたのかを聞き、AIに記憶させていく。経験に照らして専門家が選手の状態を分析し、これも記憶。データが蓄積すれば「こういう状態の選手にこんな指示を出したらプレーがこう変わる」などが予測できるようになるという。川上雛菜選手(21)は「一つ一つの動きについて考えるようになった」と話す。中西康己監督も「選手が指示をどう受け止めたか分かれば指導しやすくなる」と期待する。AIが進化すれば、指導はますます効率化しそうだ。
人間コーチに変革迫る AIが助言する仕組みは健康管理の「FiNc(フィンク)」や資格試験学習の「AIマスター(ベータ版)など続々と生まれている。ライツは農業や工場技術者のワザを次世代に伝えるAIも研究。楽器演奏や写真撮影のコツ、医療といった分野も可能性がある。文字や音声でAIと対話するサービスも普及。自治体への問い合わせに対応する「AIスタッフ総合案内サービス」は埼玉県戸田市、静岡県袋井市などが導入した。矢野経済研究所(東京・中野)は市場規模が2017年で11億円、22年には12倍の132億円に拡大すると予測する。一方通行ではなく、双方向で対話できるのが大きい。三菱総合研究所の比屋根一雄AIイノベーション推進室長は「マンツーマンで学ぶ潜在ニーズは大きいが、技術やコストの制約があった。コーチングでのAI活用は将来有望」と指摘する。一方で「人間のコーチより高い次元を求められるだろう」とも。今は補佐役だとしても、将来AIはどこまでdけいるようになるのか。人間は何を上積みできるのか。「先生」も変革を迫らる。(河野俊)

 

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