7日 患者を生きる 永六輔の大往生【2】

朝日新聞2017年4月4日25面:車椅子で外出楽しむ パーキンソン病の影響で足元がふらつくことが増えた永六輔さんは、2014年春から週に数回、看護師に来てもらうようになった。妻の昌子さんががんで在宅医療した時に担当してもらった在宅看護研究センター(東京都新宿区)の鈴木紀子さん(65)で、自分の病状が深刻なのかと不安がる永さんに笑顔でこう語りかけた。「これからますます輝いていただくために、来たんですよ」
かつて鈴木さんは昌子さんを訪ねた際に、永さんから「妻は笑い声が好きだから、どうか笑っていてください」と言われたことを覚えていた。「永さんの看護でも、笑ってもらおう」と考えた。
訪問看護は医師の指示を受けた看護師が、自宅での療養を支援する。だが、仕事で各地を旅してみた永さんは「自宅にいても、少しでも外の風を感じたい」と希望した。そこで、鈴木さんは長女の千絵さん(58)とも話し合い、公的保険での看護に加えて、訪問のたびに、保険適用外の個別対応で、1時間半ほど車椅子で外出する時間をつくることにした。
鈴木さんら看護師が治y宅に訪ねてくると、脈拍や血圧を測った後、初めのうちはリビングで立ったまま左右の足に交互に体重をかける練習をした。慣れてくると、リハビリとして廊下を歩いたり階段を上ったりした。
リハビリの後は、車椅子で近所に出かけた。行き先は毎回、永さんが決めた。行きつけの定食屋で一緒に食事をすることもあれば、電車に乗ることもあった。散歩しながら戻ると、毎回、鈴木さんに「うがいと、手洗いです」と促された。永さんは「鬼のようなぁ、看護師がいるぅ」と節を付けて洗面台へ向かった。
車椅子になってもラジオの出演にも出かけた。仕事の迎えが来ると、表情がキリッとして、家族は「体のどこかにスイッチがあるようだ」と驚いていた。孫たちと近くの神社の祭りに出かけた時は「たこ焼きが焼けるのを目の前で見られる」と、持ち前の好奇心で車椅子から見える景色を楽しんだ。
15年の年末に「背中が痛い」と訴えるようになった。年が明けた16年1月3日、自分で立つことができなくなった。
(宮島祐美)

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