6月8日 家事のお値段「1」

朝日新聞2019年6月3日夕刊5面:家事や育児は「労働」じゃないの? 「無職の専業主婦」ー。5月の連休中、雑誌「週刊ポスト」のウェブサイト「マネーポスト」に掲載された年金についての記事でこんな表現が、インターネット上で波紋を呼んだ。ツイッターでは、「『専業主婦』も家事労働をこなす『働く女性』だ」「政治があまりにも無職の専業主婦が担ってきたことに無関心だった」といった声が広がった。家庭内の家事や育児は、労働ではないのだろうかー。「無職の専業主婦」という表現に、そんな違和感を抱いた人が多かったということだろう。実際、無償労働の価値を数量的に評価するという取り組みが、国内でもある。
国内総生産(GDP)など従来の経済統計は、主に市場を介して生産されるモノやサービスの量を測定している。一方、家庭内で無償で行われている家事や育児は含まれない。「経済統計が家庭内の無償労働を含まず、市場を介するものに偏っているという問題意識は、すでに1920年代から、欧米の経済学者たちの間にあった」と、内閣府経済社会総合研究所の主任研究官私市光生さんは指摘する。「子どもが保育園に入園できて母親が働けばGDPに含まれ、子どもが待機児童になって母親が家庭に入ると、GDPに反映されないのです」また、農家が作った米や野菜を自家消費するのはGDPに含まれるが、稲刈りの手伝いなど隣近所との助け合いは含まれない。そのため、GDPは、農村人口が多い国の豊かさを正しく把握できていない可能性があるという。
一方、生産物を生み出しているわけではないが、GDPに入っているものもある。「持ち家」だ。家賃単価には公的な統計があり、「部屋を賃貸すればいくらになるか」を貨幣評価することができる。持ち家の貨幣評価は、GDPの国際基準でも認められている。つまり、GDPには、市場を介さなくても評価しやすいものは含まれ、評価しにくいものは含まれないのだ。こうした統計の隔たりは、「経済への女性の貢献が過小評価されている」との批判を集めてきた。
95年、北京で開かれた国連の世界女性会議では、女性の無償労働(アンペイドワーク)が議論され、政府や国際機関で、無償労働の価値を数量的に評価することが、行動綱領に盛り込まれた。日本では97年、当時の経済企画庁が初めて、男女別の無償労働の貨幣評価を推計し公表した。その後も2018年まで計5回にわたって推計し、公表し、最新の16年データを使った推計によると、無償労働の総額は最大で約143兆円。日本のGDPの約2割を占めていることが分かった。これまで、英国やオーストラリア、カナダな多くの国で推計され、国連欧州経済委員会(UNECE)は17年、「無償の家計サービス生産の貨幣評価についての指針」を作ったが、正式な国際基準は完成していない。(杉原里美)

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