6月5日 池上彰の新聞ななめ読み

朝日新聞2019年5月31日17面:欧州会議で見えたもの EU懐疑派の定着なぜ イギリスの離脱をめぐる混乱など、このところニュースになることの多い欧州連合(EU)ですが、欧州議会選挙の結果が出ました。欧州議会の存在は、なかなかわかりにくいものです。その役割を解説しているのが本紙5月28日付朝刊の「いちかわかる!」です。 <欧州議会はEUの法律づくりの大半に関わる。行政組織の「欧州委員会」がつくった法律や予算の原案について、加盟国の大臣でつくる「EU理事会」と一緒に承認する。日本とEUの経済連携協定も、欧州議会の承認が必要だった> 本当は、「国家に立法・行政・司法の三権があるように、EUの立法権を持つのが欧州議会」と説明したくなるのですが、ここで説明があるように、「EU理事会」と一緒に承認することになっているので、単純に「立法権を持つ」と言い切れないところが困ったところです。結果的に「欧州議会はEUの法律づくりの大半に関わる」という抽象的な表現になってしまいます。一方、日経新聞は5月26日付朝刊は、<欧州議会はEUの「下院」に相当し、予算案や法案に影響力を持つ> と説明しています。「なるほど!」と納得した人がどれだけいるでしょうか。もし欧州議会が「下院」であるならば、「EU理事会」は「上院」にあたるのでしょうか。一段と迷宮に入っていくような気がします。ここはまあ、名前の通り、「EUの議会」の選挙が行われたと受け止めておきましょう。選挙結果はどうだったのか。28日付本紙朝刊3面は、こう報じています。<1979年の第1回選挙以来、議会を主導してきた中道の佐右両派の退潮で、初めて合計で過半数割れする歴史的な結果となった。リベラルや緑の党の伸長で親EU派としては多数を維持するものの、EU懐疑派勢力が定着し、一部は拡大する見通しだ> EU懐疑派勢力はなぜ定着したのか。その理由がわかる記事が、投票結果が判明する前の26日付朝刊に掲載されていました。見出しは「忘れられた地方 右翼政党が照準」とあります。「忘れられた地方」という表現は、アメリカでトランプ大統領が当選したとき、当選の理由として使われました。中央政治から「忘れられた地方」の人たちが、現実への不満から極端な言動の候補者を支持したという分析です。記事の中で、フランスの右翼政党の国民連合の集会に参加居した年金生活者は「地方の実情をろくに知らない(EU本部の)ブリュッセルでものごとが決まるから、ますます生活が悪くなる」と語っています。アメリカの「忘れられた地方」の人々が首都ワシントンを敵視したように、ここではブリュッセルが敵視の対象です。<隣国ドイツでは2013年にできた右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が経済的に恵まれない地方の「忘れられた人たち」を格好の集票対象にしている> アメリカもEUも同じ状況にあることが、この記事でわかります。こうした状況を経済から分析した記事が、やはり日経新聞の同日付朝刊に掲載されています。スウェーデンのシンクタンクのデータをもとに、こう解説します。<2018年までに実施された直近の選挙でのポピュリズム政党への投票率はイタリアが56.7%、ギリシャは57%と過半数を超え、10年前に比べてそれぞれ約40ポイントも上昇した。直接的な要因は長引く景気低迷だ。18年の失業率はギリシャが19.3%、イタリアが10.6%に達した。こうした状況のなか、雇用や治安の悪化を全部ひっくるめて移民のせいにし、野放図な財政拡張を主張するポピュリズム政党が人気を得てしまう構図だ> 失業率の高さとポピュリズム政党の支持率の高さは相関関係にある。なるほどという分析です。
経済が落ち込む中でヒトラーのナチスが伸長した第2次世界大戦前の欧州を想起してしまいますが、この連想は当たっているのか、心配しすぎなのか。解説を持っています。 ◇東京本社発行の最終版を基にしています。

 

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