6月26日 耕論 女性議員増える?

朝日新聞2019年6月21日13面:候補者男女均等法が施行され、初の国政選挙となる参議院選挙が近づいてきた。春の統一地方選では、当選者の女性比率は増えたものの、「微増」にとどまった。国政で「風」は吹くのか。 声上げなければ変わらず 喜成清恵さん 金沢市議会議員 1970年生まれ。上智大学の三浦まり教授らが共同代表を務めるパリテ・アカデミーの合宿に昨年、参加した。 4月の統一地方選挙で、金沢市議に初当選しました。定数38に対し43人が立候補。女性は全員当選し、改選前に比べ2人増えました。とはいえまだ7人で、全体の2割に届いていません。私は立憲民主党の公認でしたが、労組など組織の支援は一切ありません。事務所開きに集まったのは、NPO活動で知り合った人や家族、親せきら十数人。組織力のなさをカバーしたのが、3年ほど前に立ち上げたこども食堂で着ている「かっぽう着」です。これを着て顔と名前を覚えてもらい、「未来はおかんにまかせまっし」と訴えました。
政治の役割は、懸命に生きる人を支えること。選挙中は貧困問題や子育て、女性への支援策の充実を訴えました。私自身、家庭内暴力が原因で離婚し娘2人を育てました。長女も小1の息子がいるシングルマザーなので、子育ての大変さはよく分かります。「何も変わらない」と、これまで投票したことがなかったという若い女性や母親たちが、支持してくれました。男性の中には、「市議はいったい何をやっているのか分からない」という人もいて、新顔の私に投票してくれたのです。苦戦を予想していたのが、ふたをあければ11位で当選しました。街頭で何度も使った言葉が「パテリ(男女均等)」でした。「パテリって何ですか」。そこから会話が始まりました。男女の人口比率は半々ですから、議会も男女同数にすべきです。市の管理職も審議会も男性が多い。こうした点も指摘し共感を得ました。そもそも、政治の世界に入ることは、考えもしませんでした。しかし、妊婦に診療費の上乗せを求める「妊婦加算」や、税負担を軽くする「寡婦(寡夫)控除」から未婚の一人親が外されることをニュースで知り、女性として黙っているわけにはいきませんでした。
昨年成立し、「日本版パリテ法」と言われる候補者男女均等法は強制力がないとはいえ、一定の効果があると思います。夏の参議院選挙も、野党を中心に女性候補が増えそうです。ただ石川県は、自民党の男性現職国会議員が圧倒的に強いのが現実です。国政に女性を送るのは容易ではありません。私が当選したような「風」を国政でも吹かせるには、日頃からの準備が必要です。そこで女性のための政治塾を金沢で開き、党派や自治体の枠を超え、経験を学び合い、情報交換を進めようと思っています。あきらめてしまい、声を上げなければ、何も変わりません。傍聴席を女性でいっぱいにすれば、いいかげんな議会運営はできないはず。まずは身近な市政を変え、国政につなげていければと思います。(聞き手・桜井泉)
法律少しずつ「育てる」 赤松良子さん 元文部大臣 1929年生まれ。旧労働省時代に男女雇用均等法成立に尽力。女性の政治参加を支援するWINWIN代表。 春の統一地方選で、女性議員は「微増」にとどまりました。過度な期待はしていまなかったので、がっかりもしていませんよ。男女雇用均等法の時もそうでした。初めは企業の募集・採用・昇進などの差別禁止規定は努力義務にすぎず、「みにくいアヒルの子を白鳥にしてね」と、後輩たちに改正を託しました。法律ができたからって、世の中、急に変わるわけじゃない。でも、均等法のビフォー&アフターを見れば、違いは明らかでしょう。法律があるとないとでは大違い。あとは、どう育てていくのかが重要なのです。候補者男女均等法も、強制力のない理念法です。「アフター」をより良いものにしていく努力が欠かせません。最も重要なものは、各政党が女性議員比率の目標を立て、候補者の一定数を男女に割り当てるクオータを導入することです。野党は割と具体的な目標を掲げています。大きな壁は自民党です。強大な与党なにの女性比率がとても低い上、具体的な数値目標がないのは困ったことです。
ただ先月、候補者男女均等法1周年の集会で自民党の稲田朋美・筆頭副幹事長が「数値目標を作りたい。そうでないと前進できない」と、はっきり言いました。私は一生懸命手をたたきましたよ。自民党が目標を明確に掲げたら、影響は大きいと思います。選挙制度の見直しも必要です。女性の挑戦を阻む大きな壁は、選挙区の定数が1人区です。「ボス」の定数席になっていて、新人、とりわけ女性が出ていくのは難しい。ほかにも様々な点で、公職選挙法は現職に有利に働くしくみになっています。フランスの県議会は、男女ペアで立候補するそうね。議会はおのずとパリテになる。「けったいなこと考えるね~」と驚いたけど、どうしたら女性が壁を越えられるのか、日本でももっと知恵を出し合わないといけないわね。自分が住む地域や属する組織の女性の地位が、どうなっているのか。その実態を知ってガックリする人がいることころは、変われると思います。女性の地位が低いと気づいたら、変えていく努力をそれぞれの場所でする。学校や地域社会、企業、行政も、女性リーダーを育てていく。それが、女性議員を増やすことにもつながっていくでしょう。参院選でも女性が一気に増えるとは思っていません。ものごとは何でも、ピョンピョーン! とカンガルーが跳ぶようには変わっていかないの。だけど、コアラみたいに居眠りばかりしてたらダメ。何かおかしいな、と思ったら声を上げる。世の中が変わるしくみを理解して、押すべきスイッチを押す。そうやって少しずつ着実に、議会も社会も変えていけたらいいわね。
(聞き手・三島あずさ)
候補者の「供給」足りない 川人貞史さん 帝京大教授 1952生まれ。政治学者。東京大学教授などを歴任。2019年5月から衆院議員選挙区画定審議会会長。 日本では、多くの人々が国政でも地方政治でも、女性の進出を支持していることは調査結果に出ています。2005年の郵政選挙直後に実施した全国調査でも「議員における女性の割合は何%が適正か」とたずねたところ、ほとんどの回答は20~50%台の四つの選択肢に集まりました。女性候補は選挙においてむしろ有利かもしれません。社会党(当時)が参院選で多くの女性候補を当選させた「マドンナブーム」が1989年にありました。日本では女性議員に対する「需要」は他国に比べても低くないのです。しかし05年の調査当時、衆院の女性議員の割合は9%。そして、日本版パリテ法施行後初となった統一地方選の結果も「微増」でした。中長期的に微増傾向が続いているので、法の効果もあったとはいえないでしょう。つまり「需要」はあるのに女性候補者の「供給」が少ないのではないかと思います。なぜか。いくつかの要因が考えられますが、日本は人口当たりの政治家の数が少なく、ただでさえ政治は縁遠い世界。男女ともに政治家になるインセンティブが働きにくいのです。さらに「候補者予備軍」とされる集団内におけるジェンダーギャップがあります。「予備軍」の属性としては、弁護士などの専門職があげられますが、ここで男女間の隔たりが大きい。また一般社会では産休や育休が定着しつつありますが、政治の世界では妊娠・出産はタブー視される。日本の「ガラスの天井」はここです。結果的に、日本の女性議員比率の低さは先進国の中では「周回遅れのランナー」ですらないほどの水準です。しかし理由を「文化論」で考えてはいけません。ほかの国も元々は低かったのですから。英国は労働党が女性候補を積極的に擁立するポジティブアクションを90年代に始め、フランスは罰則規定を入れたパリテ法を00年に導入しました。いずれも導入前の女性議員増加の割合は10%程度でした。さらに政権交代が女性議員増加を後押ししました。英国は97年にブレア政権誕生で与党が保守党から労働党に交代したことで、フランスではマクロン大統領が作った新党が下院選で勝ち、飛躍的に伸びました。与党は候補者擁立で現職を優先せざるをえないので、長期政権では構造的に新陳代謝が起きにくいのです。今回の参院選は国政選挙のため、統一地方選に比べて候補者数も少なく、与野党逆転でも起きない限り、大きな変化は起きにくいと思います。ただ、女性政治家の「需要」は確かにあります。選挙で世論が後押ししていることがはっきりすれば、候補者が少ない政党への罰則規定の導入など、具体的な次の手が講じられるようになるでしょう。(聞き手・高久潤)

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