6月15日 世界遺産「1」

朝日新聞2019年6月10日夕刊9面:百舌鳥・古市古墳群どんな特色? この夏、「百舌鳥・古市古墳群」(大阪府)が、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産になる見通しだ。実現すれば国内で23件目となる。世界遺産条約の採択から半世紀近く。世界各地に多種多様な遺産が点在するが、「古墳群」は異色の存在になりそうだ。どんな遺産なのか。堺市の百舌鳥古墳群と大阪府羽曳野市、藤井寺市の古市古墳群の計49基ある古墳で構成され、全国に約16万基ある古墳の頂点とされる。エジプトのピラミッドや中国の始皇帝陵と並び称され、国内最大の規模を誇る大山古墳(伝仁徳天皇陵、長さ486㍍)、規模第2位の誉田御廟山古墳(伝応神天皇陵、同365㍍)など巨大な前方後円墳がひしめく。初期国家が政治勢力の連合体として成立する4~5世紀の日本列島の政治や社会を雄弁に物語り、小さな円墳や方墳も重要なパーツとして構成資産を支える。ユネスコの諮問機関イコモス(国際記念物遺跡会議)が5月、世界遺産にふさわしいと勧告した。世界遺産になれば、国内外から大勢の観光客が押し寄せることが見込まれる。古墳の中を散策したいと望むファンもいるだろうが、」構成資産の過半数を占める29基が歴代天皇や皇后、皇族の墓として宮内庁が管理する陵墓や陵墓参考地などのため、一般の人の立ち入りは原則禁じられている。天皇陵が世界遺産に登録されるのは初めてだ。
学術的な発掘調査が認められず、葬られた人物像が確定しないため、宮内庁が主張する被葬者と学界の見解はその大半が食い違う。もちろん、被葬者が誰であっても、その古墳が持つ歴史的価値は揺るぎない。オーセンティシティー(真正性)にも影響はない。ただ、登録によって「〇〇天皇陵古墳」という政府が推薦したときに付けた名称だけが独り歩きし、確定していない被葬者をめぐる議論が形骸化しないかと懸念する専門家は少なくない。住宅地に埋もれるように点在する、都市型遺産なのも特徴だ。地元の自治体は建物の高さや看板の規制を通してよりよい環境づくりに取り組むが、開発圧力はこれからも続くとみられる。構成遺産からこぼれ落ちた古墳もあり、それらをどう組入れて一体的な整備をはかるかも、今後に残された。イコモスは「さらに保護すべき対象と、その手段について検討すること」と釘を刺す。構成資産の古墳も万全な保存状態というわけではない。時間がたてば水の堀に面した護岸は崩壊し、樹木が倒れたら、その影響は墳丘本体にも及ぶ。国や自治体だけですべてに目を配り、適切に維持するのは並大抵の努力ではできない。そこで、地元社会が保存などにどう参画していくのかが鍵となる。行政と市民が一体となり、古墳群をどのように将来に伝えていくのか。未来の遺産保護へ向けた試金石としても、世界の注目を集めそうだ。(編集委員・中村俊介)

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