6月14日 ひらけセサミの多様性

朝日新聞2019年6月8日夕刊1面:番組50年TVの枠超え学校教育に 見た目や考え方が違う多彩なキャラクターが登場する教育番組「セサミストリート」。米国での放映開始から今年で50年となり、150カ国・地域以上で親しまれている。先入観にとらわれない発想や相互理解の大切さなどを学んでもらおうと、日本では学校の授業などでも使われ始めた。埼玉県戸田市の市立新曽小学校。4年2組の教室で4月、セサミを教材にした授業があった。テレビ画面の映像を子どもたちが見つめる。道に積もった落ち葉に、鳥のキャラクターのビッグバードが大喜び。「落ち葉はそのままにしよう」と仲間に提案した。そこで、講師の為田裕行さんが問いかけた。「みんな賛成?」 さっそく声が上がる。ある男児は「危険性がある」と指摘した。落ち葉で滑ってけがをする人が出るかもしれない。と。為田さんはこう返した。「ビッグバードがいいと思うことが、コミュニティー全体の安全とは違うことがあるよね」映像は続き、道に積もった落ち葉はみんなでアートをつくって残すと決めた。2年前に始まった「セサミ授業」。評判は上々だ。風巻美希さん(9)は「キャラがかわいい。一番楽しい授業」。同じクラスの斉藤虹夏さん(9)は「自分と違う意見もいいことがあるとわかった」と笑った。
 異文化を理解 セサミは日本ではNHKが1971~2004年に米国版を放映していた。その後、民放で日本語版が放送されたが3年で終了。いまはユーチューブにチャンネルがある。そこで、日本でこどもたちに届く機会を広げようと、コンテンツづくりを担ってきた米国のNPO(非営利組織)が学校の授業への「進出」をい探り、小学校向けのプログラム(6年間72コマ分)をつくった。夢を持ち、計画を立て、多様性の理解や社会への貢献などを考える。2年前に先行して採り入れた戸田市の小学校に続き、今年は全国の10近い市や区で導入をめざしている。セサミのキャラとともに「難民について知る」ことなどをテーマにしたイベントも各地で開かれ、学校以外にも活用の場が増えつつある。セサミストリートは、1969年11月に米国で放映が始まった教育番組シリーズだ。当時の米国の社会状況をふまえ、貧困などで十分な教育を受けにくい子どもにテレビで教育を届けようという狙いだった。
外見や考え方、家庭環境などが違う相手との相互理解の大切さや、直面する試練や苦境にどう考えて行動するか、などを愛らしいキャラクターの姿を通じて考えてもらうことが目的だ。各国・地域ごとの社会情勢などをふまえた独自のキャラも加わっている。世界各地でテレビやインターネット、本などを通じて親しまれているが、日本では長く英会話番組というイメージが強かった。セサミワークショップの長岡学日本代表は「多様性など、教育という原点に戻り、子どもが触れられる機会を増やしていければ」と話す。日本も経済の停滞などで収入格差が広がり、家庭のあり方は多様化した。発達障害者とされる数も増加。働く外国人やその子供も増え、異文化やタイプの違う人と触れる機会も増えている。新曽小でセサミ授業を担当する教師の松本明子さんは「正解か不正解かだけではない色んな意見があるということを、この時期に感じる意義は大きい」。
 答えいくつも 鳥取大学院の井上雅彦教授(臨床心理学)は「色んな特性の子どもが増え、助けてあげる対象ではなく、どう関わるかを考える時代。(セサミは)周りの工夫で特性は長所になることを楽しい雰囲気で教えてくれ、学校などで広がるのではないか」と話す。日本語版インターネット動画には、自閉症という設定のジュリアというキャラが出てくる。返事が遅いことや、パニックになることもあるが、豊かな発想力で周囲を楽しませる。日本で今年、二十数年ぶりに出版された絵本は、最後に内容を振り返りながら、答えが一つではない問いかけをするのが特徴だ。「あなたならどうする?」(後藤大輔)
*セサミストリート 子ども向けの教育手法などを研究する米国のNPO「セサミワークショップ」が手がける教育コンテンツ。学校へ行けない子どもに良い教育を提供するため、1969年に米国でテレビ番組として始まった。色や形、大きさが違うマペット(人形)と人間が登場。多彩なキャラには「人と人との壁をなくす」という思いが込められている。

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