6月12日 オトナになった女子たちへ 伊藤理佐

朝日新聞2019年6月7日22面:以上は認められません はじめ、「押し売り」と思っちゃったのだ。というのは、数日前、区の方からきました的な態度で、敷地内の下水溝を見せてくださいーいって、作業服を着た若い男の人が「汚水枡」ってのを開けて「3万8千円です」って、金額出ちゃって。セールスだったのだ。調べたら年寄りを狙う有名なモノらしい。ギイイ、となっていたところへ、「電気の安全点検です~」と、またまた作業服のお兄さんが来た日にゃあ、「きーたーなー」と、なり、レベルが5段階なら、底の5みたいな声で、「なんですか?」(低音)「安全点検てなんですかっ?」(フォルテシモッ)と、態度が冷えっ冷え、になってしまった。お兄さん、この温度に慣れている感じで、そこもあやしかった。「4年に一度の点検です」4年に一度もあやしい。しかも、室内、室外、両方点検させてくださーい、だと!? あやしすぎる、しかしヨシダサンが家にいたし、勇気を出して門扉を開けた。
「やるかコノヤロ」「ノーと言える日本人!」と、右手にチロルチョコを持っていたら溶けるほどだ。しかし。点検作業が進めば進むほど、どんどん、関東電気保安協会の無料点検だった。テキパキ作業をこなすお兄さんの裏で、最初の冷たい態度が、どんどん恥ずかしくなっていた。でもなんか、途中で直せなくて、最初の態度を貫き通そうとしていた。スジを通そうとしている。おい。おまえ。どうしてここでマジメ? なにしちゃってんの。ご先祖様の声も聞こえてきそうだ。ここでわたしがヒキョウなのはさ、「ちょっと声が低いため、いつも無愛想に思われちゃう人」に昇格しようと、「へー」とか「はあ」とか、声が5のまま、マメにアイノテを入れているのだった。お兄さんは最期までサワヤカに、「以上は認められません」のところにマルした紙を置いて帰った。無料だった。「異常は認められません」が、しみた。ある日、東京に、態度の悪いオバサンがいました。このように、申し訳ない。(漫画家)

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