6月10日 家事のお値段「3」

朝日新聞2019年6月5日夕刊5面:「内助の功」は評価されてきたの? 家庭内の無償労働は、制度の中で、どのように位置づけられてきたのだろう。「扶養控除の中から配偶者については、配偶者控除ということを特別に取り上げてやったらどうか」1959年3月、参議院の大蔵委員会で、社会党の大矢正議員が、こんな提案をしている。その理由として、大矢氏は子育てや介護を挙げ、「働き場所が違うが、(夫婦は)お互いに働いている」と述べた。これに対し、当時の佐藤栄作・大蔵大臣は「大変けっこうなご指摘のように思います」と答弁。2年後、配偶者を扶養している雇用者の所得税を減らす「配偶者控除」の制度ができた。
当初は年9万円だった控除額は、毎年のように上昇。67年2月の朝日新聞は「チョッピリ上がる『妻の座』」という見出しで、税制改正を伝えている。サラリーマンの夫に専業主婦の妻が「標準」だった時代。その後も、「妻の座」は上がり続けた。「奥様に対する『内助の功』という点についても特別の計らいをした」1987年9月の同委員会では、当時の中曽根康弘首相が、2兆円近い減税案を説明する中で、こんなふうに述べている。「『内助の功』への特別な計らい」とは、「配偶者特別控除」のことだ。
配偶者特別控除は、配偶者控除の半額程度を上乗せするとして始まった。が、最終的に配偶者控除と同額になり、95年には、両控除を合わせて最大で年76万円に達した。97年以降、共働き世帯数が専業主婦世帯を本格的に上回るようになる中で、2004年、配偶者特別控除の上乗せ部分は廃止された。「妻の座」に「内助の功」ー。介護や子育てを「働いている」とみなして導入された経緯から、配偶者控除は、家事などの無償労働を認めた制度だといえるのだろうか。お茶の水女子大学の豊福実紀助教(政治学)は、「配偶者の家事の価値を認めるなら、税を軽減する根拠にならない」と指摘する。家事を評価するなら、「妻の家事労働が生み出す価値の分だけ、家計内でプラスアルファの所得が発生している」とみることができる。これは、経済学では「帰属所得」と呼ばれている。家事の価値の分だけ豊かに暮らせているともいえるため、減税の根拠にはならないというのだ。それでも配偶者控除が拡充され続けてきた背景には、与野党の減税競争があった。と豊福助教はみる。1960年代から70年代にかけて、与党の自民党は、支持層の農業や自営業者を対象に、妻に給料を払って税負担を軽くする制度などを導入。給与所得者を主な支持層とする野党は、これを念頭に、サラリーマン世帯の「内助の功」を訴えた。与党もこれに対抗する形で減税を競い合うようになっていった、というわけだ。「『内助の功』は、農業や自営業者の世帯は強く意識したものだった」(杉原里美)

 

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