6月2日 不公平は消費者が正す

東京新聞2019年5月27日5面:巨大IT規制 独占禁止法で巨大IT企業を規制する動きが出ている。底流に富やネット情報独占への不信がある。現行規制が追いついていないなら変えねばならない。政府が規制対象として念頭に置いているのは、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と呼ばれる米国の巨大IT企業や国内の楽天、ヤフーなどだ。いずれもネット空間の取引で大きな収入を得ている。公正取引員会はIT5社(グーグル、アマゾン、ヤフー、アップル、楽天)との取引業者や利用者を対象に調査を実施。9割超の業者が、5社のうちの1社との取引について「規約を一方的に変更された」と回答した。
優越的地位の乱用か その数値は最も低いケースでも約5割だった。一方、取引業者の約8~9割が各IT大手との取引を続けざるを得ないとした。公取委は現行の取引実態が、独禁法で規定されている強い立場にある企業による「優越的地位の乱用」にあたるか見極めている。この乱用規制は日本や韓国などに限られた独特のルールだ。違反すると排除措置命令や課微金を課すといった罰則がある。適用すれば世界に先駆けた実効性の高い対策となるはずだ。
IT大手による個人情報の収集も問題だ。スマートフォンを使うと、ひんぱんに利用者の好みに合う広告が優先的に画面に現れる。集めた個人情報を駆使した広告手法の典型例だ。フェイスブックでは昨年8千700万人の個人情報の不正利用が発覚。グーグルは昨年、情報流出の可能性があったにもかかわらず約半年間公表を遅らせた。IT大手の最大の武器は貯蓄された膨大な情報であり、巨額収入を得る基盤になっている。調査では約75%の利用者が、IT企業による個人情報や利用した際のデータ収集について「懸念がある」と回答している。 税の公平な微収を どうやって個人情報を集めているかも不透明だ。不公正な情報独占につながっているならば、独禁法に強制的な開示義務の規定を設けるべきだろう。独禁法を活用した対策は現実的で政府の本気度が伝わる。しかし、取引手法やデータ収集に方の網をかけただけでは問題の核心を突いたとはいえない。ここで改めて指摘したいのは、規制の核心部の一つは、税の公平な微収ということだ。巨大IT企業に対しする不満の最大の温床だからだ。国際展開する企業への課税は原則として、進出国に工場や支店などの拠点があって利益を上げた場合に対象となる。
だがIT企業の取引は、ネット空間で国境を自由に行き来するため必ずしも拠点は必要ない。複雑な手法を駆使して税率の低い国に利益を移すケースも多い。このため税の微収には常に困難が付きまとう。独禁法による規制を軌道に乗せた上で、経営の透明化を促し課税強化につなげる必要がある。その際、必要不可欠なのが国を超えた連携だ。英国を含む欧州連合(EU)では課税強化に積極的で連携が図りやすい。問題はIT大手を多数抱え規制に積極的な米国だ。かぎを握るのは利用者の国際的な意識の共有である。米国でも消費者の不満は他国と共通しているはずだ。多くの利用者は有権者でもあり、その意志は政治と行政を動かす力を持つ。日本初の規制のうねりを起こし、国際世論を刺激してもいいだろう。国境を越えてビジネスを展開しているIT企業の経営者たちは、自国の公共性への意識がやや薄い印象を受ける。この姿勢が節税意欲に拍車を掛けているのではないだろうか。ただ経営者たちも教育を受け、道路や電力など社会基盤を使ってきたはずだ。税や個人情報をめぐる不信や情報漏えい事故を各国で生んでいる以上、公共性の欠如は許されない。
市民の意志が変える 今、各国の利用者が連帯すればルールを変え巨大IT企業を動かせるはずだ。利用者は直接の支払いがない場合でも広告を通じた利益獲得の原動力であり、IT産業の消費者といえる。米国では消費者運動が自動車排ガス規制基準を実現。それは自動車産業発展にもつながった。ごみや温室効果ガス削減に向け、世界的に広がったマイバッグ運動も消費者が主役だ。IT大手は存在に見合うだけのコストを払うべきだ。それを促すための独禁法の活用は評価できる提案だ。だが大きな突破口になるかは、その内容を丹念に吟味しつつ後押しする利用者の強い意志にかかっている。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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