6日てんでんこ 皇室と震災Ⅱ【21】

朝日新聞2017年8月3日3面:熊本県庁から「天皇陛下が空いたいとおっしゃっています」と電話があった。 2013年10月25日夜。「全国豊かな海づくり大会」出席のため天皇、皇后両陛下が熊本県へ向けて出発する前夜、皇后さまから知人への問い合わせがあった。胎児性患者と会う時間を取りたいので、どなたに会えばいいか知りたい、という趣旨だったという。作家の石牟礼道子さん(90)が皇后さまにあてて「胎児性患者に会ってほしい」との手紙を送った直後のことだ。
26日朝。両陛下が皇居を出発する直前、「私は石牟礼さんの気持ちを非常に重く受けとめております」などとする皇后さまの気持ちが、胎児性水俣病患者が通う水俣市の施設「ほっとはうす」施設長の加藤タケ子さん(66)に伝えられた。仲介した人から「皇后さまは、やっぱり胎児性患者に会いたいと。無理なら加藤さんだけでも、とおっしゃています」と聞いた加藤さんは、「わかりました。連絡があるでしょうから、対応しようと思います」と答えた。
ほどなく熊本県庁から電話がかかった。「皇后陛下が加藤さんだけでも会いたいとおっしゃっています。断るわけにはいきませんよ」。加藤さんは「私一人で会うわけにはいきません。胎児性患者と一緒ということならばお会いしたいと思います」と答えた。すると県職員は「胎児性患者の同行は2人まで。それ以外は同行しないでください」という。
「ほっとはうす理事長の杉本雄さん(15年死去)に相談したい」と言うと「一切困ります。漏れたら大変です。すべて加藤さん一人で判断してください」と県職員。 悩んだあげく、「ほっとはうす」に通う加賀田清子さん(61)と金子雄二さん(61)を連れて行くことにした。県からはタクシーの車種と運転手の名、携帯番号を問い合わせが「あった。「すべてを極秘に」と念を押され、加藤さんはだれにも相談できないまま、車いすが乗せられるワゴンタクシーを手配した。
両陛下が水俣入りした10月27日昼過ぎ。加藤さんは、面会場所に指定された水俣市の熊本環境センター近くに止めたタクシーの中で、運転手に外に出してもらって、加賀田さんと金子さんに初めて告げた。「実はこれから両陛下に会うんです。お会いしてほしいという石牟礼先生のお気持ちから、こうなりました。いろんなことがあって、本当のことを言えなくてごめんなさい」(北野隆一)

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