6日てんでんこ マイ電力⑧

朝日新聞2017年5月4日3面:「市民発電所に投資するのは、村の人たちとの長いおつきあいがうれしいから」
岩手県野田村の「だらすこ工房」にいる大沢継弥(71)を3日、小原隆史(69)が訪ねてきた。道路から工房への入り口にあるヤマザクラは満開だ。「今年もよろしくお願いしますよ」「さあて、忙しくなるな」大沢が、東京のNPO法人「太陽光発電所ネットワーク(PVネット)」に発電所づくりを持ちかけられたのは、東日本大震災の翌年の秋だった。地元でフクロウを意味する「だらすこ」工房には震災後、大沢が声をかけた60代から80代の男たちが集まってきて、おしゃべりをしながら木工品作りを楽しんでいた。
「発電所なんてつくれるかな?」「やってみよう。電気のことで苦労したから」。元大工も元土木作業員もいるし、大沢はNTT勤めだったから配線はお手のものだ。
大沢ら5人は工房の道をはさんだ向かい側の雑木林を切り開き、架台をつくった。雪解けを持って216枚の太陽光パネルを載せ、2013年6月に完成した。1日平均100~200キロワット時を発電し、月間の売電額は10万~20万円になる。 パネルなどの資金は「PVネット」が市民ファンドを設けて全国に協力を呼びかけた。89人から1890万円が集まった。岩手県生まれで今は千葉県に住む小原は、1口10万円を投資した。売電の利益などで14年間で返済する仕組みだが、「おカネのことより、自然エネを通じて、野田村の人たちとながいおつきあいができることがうれしい」。
1年あたり千円前後が配当となるが、希望者には村の特産ワインやイクラを届ける。昨年は、だらすこの男たちが地元のヤケキで作った「ナベ敷き」を配当品とした。今月3日に開かれる「自然エネルギー学校」の企画を相談するためだ。「市民共同発電所」を支援する人たちが家族連れでやってきて、村人とともに自然エネを体験する。
大沢は今年、復興公営住宅の集会所に太陽光パネルを取り付けたいと思っている。ほとんどの被災者は昨年春、仮設住宅から復興住宅などに引っ越したが、太陽光発電はあまり知られていないからだ。
こうした市民・地域発電所は、都心部の市民らがファンドで支援する場合を含め、全国で千を超えた。「人のつながりづくり」は原発にできる技ではない。(菅沼栄一郎)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る