5月4日 ある日突然 脊髄損傷【3】

朝日新聞5月4日19面:高校3年生だった2010年、柔道の試合で脊髄を損傷し、手足のまひが残った埼玉県の池田歩さん(23)は13年春、両親に勧められていたトレーニングジム「ジェイ・ワークアウト」(東京都江東区)に通い始めた。
ジムは脊髄損傷の人専用で、動かない手や足も「動かす」と意識して取り組むのが新鮮だった。 当初は、車いす姿を知り合いに見られるのが嫌で、最寄り駅を避け、新幹線で都内へ通った。外に出れば、ヒールを履いておしゃれをしている同年代の女性が目に入る。うらやましさと悔しさで泣き出しそうな時もあった。
だが、ジムで出会った同じ脊髄損傷の人たちの姿が刺激になった。一人暮らしをする人。障害の程度は人それぞれだが、自分では挑戦することすら思いつかなかったことばかりだった。
落ちていた筋力や体力が少しずつ回復。ドライヤーを手にして髪を乾かせるようになった。車いすに座っていられる時間ものびた。
自信につながり、周囲の視線も以前ほど気にならなくなった。「体の障害よりも、周りと比べる自分の気持ちの方が障害になっていたんだ」と気づいた。
自動車教習所に通い、ブレーキやアクセルを手で操作する車で運転免許証を取得した。15年冬には埼玉県内の市役所に事務職員として採用された。採用試験で自身の長所を問われて、こう答えた。「やりたいこと思ったら、『車いすだから』とあきらめるのだはなく、できるようにするための方法を考え挑戦するところです」 車いすは電動補助付きに変えた。就職してすぐ、新しい口座をつくるため、初めて銀行までの道を1人で出かけた。横断歩道を渡って歩道に上がるところで、2センチほどの段差に前輪が引っかかって進めなくなってしまった。
思い切って、通りすがりの女性に「持ち上げてもらえますか」と声をかけた。女性は「とょっとした段差が大変なんですよね」とにこやかに応じてくれた。「困ったら人に手助けを求めてもいいんだ」。少し気が楽なった。
就職をかなえ、結婚もしたいと思うようになった。「一緒にいて安心できる人がいいな」(伊藤綾)
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