5月29日 経済成長の道 不都合な真実

朝日新聞5月29日3面:80歳をすぎてもみんなで働けば、日本は成長できるー。
そう言われたら、多くの人は、よしがんばろうと思うだろうか。気持ちが萎えるだろうか。悪い冗談だと怒るだろうか。日本銀行副総裁の中曽宏さん(62)の講演録を読んでそんなことを考えた。
講演は今年2月、ニューヨークの日米交流団体ジャパン・ソサエティーであった。「金融政策と構造改革」と題した講演だ。平日の午後だが、240人あまりが聴きに来ていたという。
中曽さんは、日本政府が掲げている「実質的な経済成長2%」という目標を達成する厳しさから語り始める。
実質的な成長率を引き上げるためには潜在力を強めなければならない。その潜在成長率をまず2%にするには、仕事に就く人が増えることと、労働生産性を上げることが必要だ。
まず働く人の数。日本では減り続けている。それが年間0.5%ほどの上昇に転じる前提として2点を想定している。①女性の労働参加率がスウェーデン並みに上昇する ②すべての健康な高齢者が、退職年齢を問わず働き続ける。
この②について「わが国の80から84歳の高齢者のうち約60%が『問題なく日常生活を送っている』と回答していることを踏まえ」この人たちが「皆働き続ける」と仮定しての話だと説明している。
もちろん「この仮定がどのくらい現実的かという問題はさておき」と、中曽さんも付け加えている。会場で笑いが広がる様子が、講演の録画からうかがえる。
たしかに非現実的で冗談みたいだ。でも、同時にそれは現実でもある。80代でも過半数の人が働くという手段さえ想定させる日本の現実。
中曽さんは、その前提でも「2%」の実現には、労働生産性は毎年1.5%以上伸びなければならないと指摘する。さらに、働く人が増えると考えるなら、約3%もの上昇が必要だ、と論を進める。
しかし、労働生産性の上昇率は、IT産業などの活躍がめざましい1990年以降の米国でも1.5%程度。並大抵のことで実現できる数字ではない。
ここから中曽さんは、この難問に取り組むために中央銀行が実施している量的・質的金融緩和やマイナス金利を説明。
ただ、それだけでなく「マベノミクスの元の『第3の矢』すなわち成長戦略は、さらに加速させる必要があると思っています」と締めくくっている。
でも、どうやって「加速」するか? 「講演から、移民も考えようというメッセージを感じました」というのは、元日本証券取引グループCEOの斉藤惇さん(76)。講演の無い様に強い関心を持った一人だ。「『2%』を目指すなら、労働力を増やすにしても生産性を上げるにしても、高齢化の続く社会では、ありえないような数字を想定しないといけない、ということでしょう」
だとすれば「移民」ということになる。 「むずかしいテーマ。反発は根強いし、ヘイトスピーチなどのやっかいな問題もからむ。だけど、政治家も国民も向き合うしかない」
中曽さんに聞いてみると、80代まで働くという仮定は日銀での試算の結果という。「問題が、よりはっきり見せるのではないかと考えて紹介しました」 たしかに、日本社会が抱える問題の途方もなさがよくわかる。では、移民という選択肢は念頭にあったのだろうか。
「非製造業ではITの導入などで生産性が伸びる余地も残っている。政府の成長戦略を着実に実現すれば、成長力を伸ばすことは可能。移民を考える前にできることはまだあります」
だが、どんな方法でも取り組みむしろ、講演があたらめて浮かび上がらせた、高齢化社会での成長をめぐる不都合な真実から逃げることはできまい。 たぶん日本の出口は二つ。「痛みをともなう解決法」か、そうでなければ「もっと痛みをともなう解決法」か。
時間がたつほど痛みは大きい。 編集委員 大野 博人
🙄 80歳を超えてまでも働くことが前提の成長戦略? 現実離れしているとしか思えません。

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