5月27日 縮まるNHKとの距離感

朝日新聞2019年5月23日3面:人事・報道「政権寄り」の声 新元号が令和に決まった4月1日、安倍晋三首相は一部の民放とNHKをはしごした。NHKの報道番組「ニュースウオッチ9」には冒頭から出演。元号に込めた思いなどを語った。「多くの方々に前向きに明るく受け止めていただいて本当にほっとしました。明るい時代になると、そんな予感がしております」歴史的な決定を行ったこの方に来ていただいたー。キャスターは首相を紹介したが、NHK報道局職員の一人はこう話す。「首相が出演することはいつのまにか決まっていて、制作現場には事前に相談もなかったようだ」
理事返り咲き 長期政権と公共放送の現在の関係を考えさせる人事もあった。NHKは4月9日、子会社NHKエンタープライズ社長の板野裕爾氏が、本体の専務理事に返り咲く役員人事を発表。局内では、幹部から現場の職員にまで波紋が広がった。「また振り回されるのか」経済部出身の板野氏には、官邸や政治家などの意に沿うよう動くとの人物評がある。20年以上続いた報道番組「クローズアップ現代」は権力に比較的厳しい姿勢で臨むことで知られたが、2016年に終わった際、板野氏は番組制作のトップである放送総局長。現場は当初、番組の継続を決めていたが「最終的に板野氏の意向で事実上の打ち切りが決まった」と当時の複数の幹部は証言する。15年7月には、安全保障関連法を検証する「クロ現」を衆院の審議中に放送しようとした際、理由も定かでないまま、放送日が衆院通過後に変更されたという。この時も、板野氏の意向が働いたと局内には伝わった。
「絶対戻すな」 板野氏をかつて放送総局長に登用したのは籾井勝人前会長だ。だが、その籾井氏までもが、板野氏と政権の関係が強すぎるとして、1期2年で総局長を退任させ「彼を絶対に戻してはいけない。NHKの独立性が失われてしまう」と当時の朝日新聞の取材に対しても口にするようになった。役員人事は会長が提案し経営委員会の同意を得て任命する仕組み。板野氏の人事について、上田良一会長は今月9日の定例会見で「私個人の判断で決めた」と述べた。政権の意向が働いたのかは定かではない。しかし、上田会長の周辺は「上田さんは板野氏を戻すつもりはなかった。苦渋の決断をしたようだ」と解説する。板野氏は子会社などのグループ経営改革統括を担当。番組には関わらないが、年明けに任期満了を迎える会長や副会長への昇格を見据えた人事だとの見方もくすぶる。
板野氏の人事に同意した経営委の石原進委員長は報道陣に「NHKにとって良い仕事をしてくれるかどうかで判断した」と説明した。だが会合では委員の佐藤友美子・追手門学院大教授が「いろいろ反発があるのではないか」と述べるなど、2人の委員が採決を棄権した。役員人事では異例のことだ。板野氏は今月22日、朝日新聞の取材に「申し上げることはありません」と答えた。NHKの会長を選ぶ経営委員の人事には国会の同意、予算も国会の承認が必要だ。NHKの行動指針は「いかなる圧力や働きかけにも左右されない」と定めているが、報道内容には厳しい見方がある。
NHKのOBや職者らの団体は昨秋と今春、NHKに申入書を提出。「安倍首相への批判的報道がほとんどない」「政権にとって不都合と思われる事実が伝えられない」などと訴えた。申入書は昨秋の沖縄県前知事の県民葬で菅義偉官房長官にヤジが飛んだことを主要な報道番組で伝えなかったことなどを指摘する。NHKの木田幸紀放送総局長は今月22日の会見で「自律的な編集判断に基づいて放送している。意見には真摯に耳を傾けて次に生かしていきたい」と述べた。
「世論に迎合」 長らく正解と接してきたNHK幹部は、放送に影響を与えているのは、視聴者をも巻き込むような長期政権の力だとみる。「政治から口出しやNHKの忖度もあるが、政権を支持するふくれあがった世論に迎合しているという側面も大きいのではないか」(河村能宏、鈴木友里子、真野啓太)

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