5月26日 新薬 期待しすぎは禁物

朝日新聞5月26日23面:肺がん治療「オプジーボ」費用も「高」 「転移消えた」「効かない人も」
国内のがんで年間死亡者が最も多い肺がんの新しいタイプの薬として、昨年12月に承認、公的医療保険は適用された「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)。臨床試験(治験)では高い治療効果が示されたが、高価な医療費が課題になっている。
「肺がんのステージ3、5年生存率です」東京都内で居酒屋を経営する角地龍治(つのぢりゅうじ)さん(63)は昨年5月、国立がんセンター中央病院(東京都中央区)で告知された。
翌月に入院して抗がん剤と放射線治療を受け、その後は月1度の血液検査を続けた。しかし、12月のCT検査で、同じ左肺に2ヵ所で転移が見つかった。
「今月承認された新しい薬を使いますか?」担当の後藤悌(やすし)医師からオプジーボの使用を提案された。「ただ、効く人と効かない人がいます」 角地さんはすぐに決断、翌月、点滴による投薬を始めた。1回に約2時間横になるだけで、吐き気やだるさは特段感じず、店にも再び出れるようになった。
2か月後。「がんが消えました」CT検査の画像を見た後藤医師の説明を角地さんは不思議な気持ちで聞いた。「正直ピンと来ない。でも店を続けられ、自分を支えてくれる人が喜んでいるのがうれしい」
オプジーボは2014年に皮膚がんの「悪性黒色腫(メラノーマ)の新薬として、世界に先駆けて日本で承認。昨年12月には肺がんで追加承認された。国立がんセンター中央病院では、昨年12月以降約80人の肺がん患者がオプジーボの治療を受けたが、後藤さんは「2ヵ月ほど続けて、残念ながら効果がなく病気が悪くなる人が多い。『効く人もいる』という表現が適切かもしれな。副作用が出る頻度が治療の早い段階では少ないのも特徴」と話

2016/ 5/26 11:18

2016/ 5/26 11:18

す。
免疫の動き促す ■ 進行・再発対象
オプジーボはがん細胞を直接攻撃するのではなく、人に備わる免疫の働きを促す「がん免疫療法薬」だ。
がん細胞が「敵ではない」と欺くために免疫細胞は攻撃を止め、その間にがん細胞は増殖していく。オプジーボはその結合を防ぎ、免疫細胞に「がん細胞は敵だ」と知らせる。適用対象は切除不能で進行・再発した末期状態の非小細胞肺がん。原則として、初めての抗がん剤で効かなかった次の段階で使われる。 非小細胞肺がんは肺がんの約8割を占め、気管支からの発生が多い扁平上皮がん(約3割)と、末梢部の発生が多い腺がん(約5割)に大きく分類される。
欧米などでの治験では驚く結果が出た。化学療法が効かず再発した扁平上皮がんの患者272人にオプジーボと標準治療の抗がん剤(ドセタキセル)で比較した。1年後、ドセタキセルの生存率24%に対して、オプジーボは42%と高かった。
疲労や下痢などの副作用が出たのは131人中76人(ドセタキセル129人中111人)。うち、重篤例は9人(同71人)で、脱毛症は0人(同29人)。腺がんでも生存率で上回った。オプジーボが有利なのが明確なため、いずれの治験も途中で異例の中止となった。
一方、課題もわかってきた。中西洋一・九州大教授(呼吸器内科)によると、がんが縮小した割合は約2割で、効かない人には「ただの水を点滴しているのと同じ」原因も不明だ。
リウマチなど自己免疫疾患の患者には使えず、高齢者ら元々の免疫力が弱い人には効果が期待できない。日本肺癌学会は「すべての患者に有効な『夢の新薬』ではない」と過度な期待への警鐘を鳴らす。
オプジーボは医療費の問題でも注目を集めている。 肺がん治療では2週間に1回点滴をし、投与量は体重に比例する。例えば、体重70キロの男性だと1回約160万円。保険適用(3割負担)で高額医療費制度を使えば、実質負担(所得で異なる)は減るが、70歳未満で年収370万~770万円だと最初の3ヵ月は月11万円はかかる。4ヵ月目からはさらに下がる。
国の財政への影響を懸念する声もある。肺がんの新規患者は年約11万人。4月の財務省審議会で、日本の医療費年約40兆円(うち薬剤費約10兆円)に対し、5万人が1年使えば1兆7500億円で「財政を逼迫させる」との意見も出た。
小野薬品工業は今年度、肺がんで使われる患者は1万5千人(平均使用期間は6ヵ月)で、売り上げは1220億円と想定する。
九州大の中西さんも「財政破綻は大げさすぎる」。投薬をやめる場合も多く、現状では1年続ける人は約2割。一方、どのくらい投薬を続ければよいのかわかっておらず、「そこを見極める研究を進めてほしい」。
日本葉肺癌学会は、オプジーボを使う場合の詳細な治療指針を年内にまつめる。医療経済の専門家も加え、費用対効果も含めた検討を進めていく。
オプジーボは胃や食道、肝臓などでも治療が進められ、肝臓は年内に承認される見込みだ。ほかの製薬会社でも同様の仕組みの薬の申請や治験を進めている。(石塚広志・熊井洋美)

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