5月25日 高齢者の事故防止 免許制度に疑問の声

東京新聞2019年5月21日20面:専門家「実車試験導入を」 19日発生から1ヵ月を迎えた東京・池袋の乗用車暴走事故を機に、高齢ドライバーの事故防止が改めて注目されている。県内の事故で娘を亡くした遺族は、今もホームページで当時の状況を公開し、身体機能が衰えていても免許を更新できる現行制度に疑問を呈す。「もしあなたの大切な誰かが事故でいなくなってしまったら」と呼び掛ける母親。事故防止を自分のこととして考える意識が求められている。(浅野有紀)2015年12月、さいたま市のJR浦和駅近くで、道路脇を歩いていた高校1年生の稲垣聖菜さん=当時(15)=が、車にはねられ死亡した。家族を駅まで送っていた男性=同(80)=が、アクセルとハンドル操作を誤ったのが原因だった。男性は脇見をしていたわけでも、体調が悪かったわけでもなかった。裁判では、「どうしてアクセルを踏み間違えたのか分からない」と述べた。定年後も、大きな事故はなく、毎日のように運転していたという。
改正求め署名募る 聖菜さんの母・智恵美さん(49)は「今の免許更新制度では事故は防げない」と指摘する。事故当初から、聖菜さんの友人らとインターネット上で募っている制度改正を訴える署名は、賛同者が3万人を超えた。現在、75歳以上のドライバーは3年に1度の免許更新時に、検査日の日付を答えたり複数のイラストを記憶したりする認知機能検査を受ける。検査で「認知症の恐れがある」と判断され、医師の診察で認知症と診断されれば、免許の取り消しや一時停止になる。智恵美さんらが問題視しているのは、認知機能検査と同時に実施される高齢者講習だ。試験ではなく、指導員がアドバスするだけの内容で、身体機能の衰えは免許の更新には影響しない。聖菜さんの友人は、手足が震えてつえをつく高齢者が免許を更新する姿を目にし「運転するのは危険でないのか」と不安を感じていたという。県警によると、県内の人身事故件数はこの5年で減り続けているが、75歳以上の高齢者が事故の第一当事者となった割合は増加傾向にあり、昨年は全体の7.5%の1650件あった。75歳以上の免許保有者数は、全国で3番目に多い約29万人(昨年12月時点)。今後さらに増える見込みで、高齢ドライバーの事故対策の重要性が増すばかりだ。認知機能検査は、免許更新時だけでなく、信号無視など特定の交通違反をした場合にも義務付けられている。一時停止しなかったことで検査を受けた蕨市の女性(76)は「池袋の事故のようにならないよう、認知機能に問題がなければ80歳までは乗りたいが、その後は免許を返納したい」と気を引き締める。ただ、検査で「認知機能低下の恐れなし」と判断された場合でも、昨年は11人が死亡事故を起こした。「見ていて危なっかしい運転をする人はいるが、今の制度では認知機能検査を通過すれば『注意して運転して』と言うくらしかできない」(県警運転免許課の担当者)のが実情だ。一方、大手保険会社などは、自ら運転技能を確認できるよう、教習所の元教官らによる診断を受けられるサービスを展開。ドライブレコーダーを貸し出し、映像から運転の危険個所を指摘したリポートを配信して注意を促す仕組みだ。
見直しの賛否拮抗 免許制度のあり方は、警察庁の有識者会議で議論されている。警察庁が全国の指導員約2000人から回答を得た17年の調査では、高齢ドライバーへの実技試験導入の是非については、賛成39.3%、反対41.6%と拮抗した。賛成の主な理由は「リスクが特に高い運転者には運転させないことが必要」。反対理由では「代替の移動手段の確保が先決」と地方の高齢者の生活への配慮があったほか、「合格基準に達する高齢者は少なく、試験は有効ではない」との回答もあった。日本老年精神医学会は16年11月、認知機能が低下して運転に適さないことと、「認知症」と診断されることは必ずしも同義ではないとして「実車試験で運転の専門家が判断すべきだ」との提言を出した。同学会・元理事長の新井平伊医師は「指導員の中に試験に合格する高齢者が少ないという実感があるにもかかわらず、危ない運転を許してしまっている現状がある。試験で不合格となれば、免許取り消しとなっても高齢者に受け入れられやすいのではないか」と指摘している。免許制度の改正を訴える智恵美さんらのホームページは、「seina.jp」で検索。

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