5月19日 裁判員10年 被告の保釈率上昇

朝日新聞2019年5月16日26面:公判準備に配慮の流れ 裁判員裁判が始まってから10年。「調書中心」から「公判中心」に移ったことに伴い、被告の保釈率も上昇している。弁護人とひざ詰めで公判準備を行う機会を確保するという考えが浸透した結果で、影響は制度の対象外の事件まで波及している。最高裁が15日に公表した報告書によると、裁判員裁判の対象となる重大事件で、一審判決までに保釈された被告の割合は、制度導入前の2006~08年の3年間平均で4.5%だった。これが、制度開始の09年5月~12年5月の3年は8.5%に上昇し、昨年末までの6年7カ月で、さらに10.7%まで上がった。
刑事訴訟法は保釈について、長期拘留で裁判準備ができないほの不利益と、「証拠隠滅を疑う相当な理由」をてんびんにかけて判断すると定める。積極保釈の流れを作ったのは、著名な裁判官が06年に発表した論文。「連日開廷となる裁判員事件では、弁護人と被告が十分に意思疎通して準備する必要がある」と指摘し、「これまでよりも弾力的な保釈」を求めた。最高裁が14年、証拠隠滅の恐れを検討する際、「具体性」の考慮を促す決定を出したことで、傾向は加速した。
約50件の裁判員裁判を担当した板垣真也弁護士(東京弁護士会)は「保釈されているのといないのでは、裁判準備のしやすさはまるで違う」と指摘する。被告が拘留されたままだと、電話で済むささいな話し合いも、拘留所に行って面会しなければできない。保釈されていれば、被告が自ら防犯ビデオ映像を検証するなど、事前にできる準備が格段に増え、裁判の迅速化にもつながるという。板垣氏は保釈率の上昇は「傾向としては望ましい」としつつ、「杏認事件ではなかなか認められないし、公判前整理手続きが進んだ段階でないと保釈されにくい。まだ不十分だ」と指摘した。
対象外事件にも影響 裁判員制度の準備に関わった元裁判官の稗田雅洋・早稲田大法科大学院教授は保釈率の上昇について「供述書ではなく、公開の法廷での審理を重視するようになったからこその変動だ」と評価する。そのうえで「刑事裁判の本来の姿に立ち返ろうという流れで、必然的にほかの事件にも影響を与えている」という。栽培員裁判の対象外を含めた全事件の保釈率をみると、08年は14%だったが、18年は33%まで上昇した。保釈を請求した被告に限ると、同じ時期で56%から68%に上がった。最近も、東京地検特捜部が逮捕した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の保釈が認められるなど、以前は考えにくかった保釈が実現している。検察側は証拠隠滅や逃亡の恐れを重視し、こうした傾向に反発している。(阿部峻介)
辞退への対策「広報を地道に」最高裁 大谷長官 最高裁の大谷直人長官は15日、裁判員制度10年について会見した。法廷の活性化や、裁判員の感覚を反映した「多角的で深みのある判断」を成果として挙げ、「戦後最大の刑事司法の改革がおおむね順調に歩み続けている」と評価した。課題として大谷氏は候補者の辞退率の上昇や、争点の証拠を絞り込む公判前整理手続きの長期化を指摘した。辞退率は昨年、過去最高の67%となったが、対策としては「広報活動を含めた地道な取り組みを続ける」と述べることにとどめた。裁判員裁判の判決が裁判官だけの上級審で見直される割合も上昇傾向にある。この点については「裁判員裁判の審理や評議のどこが問題だと考えたのか。破棄事例を一般的に整理し、裁判所全体で考える作業をいま行っている」と明らかにした。また、「裁判員裁判で生じた変化を他の(対象外の)裁判に広げ、刑事裁判の全体像を作り直していく必要がある」とも語った。(北沢拓也)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る