5月19日 ダービー「3」

朝日新聞2019年5月15日夕刊9面:「ハナ差」「クビ差」ってどういうこと? 勝負の世界は非常だ。2400㍍の距離を走り、わずか数㌢の差が明暗を分けることがある。2016年の日本ダービーがまさにそれだった。残り100㍍あたりから2頭のマッチレースになった。内のマカヒキと外のサトノダイヤモンド。2頭はほぼ同時にゴールに飛び込んだ。写真判定の結果はマサヒキが競り勝っていた。その着差は「ハナ(鼻)」。約8㌢の間隔だった。クレジットカードの長辺より少しぐらいの差が勝者と敗者を分けた。競馬の着差は、小さな方から順に「ハナ」「アタマ(頭)」「クビ(首)」となり、それ以上は「1馬身」など「馬身」を単位に表す。日本ダービーの1.2着が、もっとも微差であるハナ差の接戦になったのは85回の歴史の中で9度を数える。
00年にハナ差で2着になったエアシャカールは、実にもったいない敗戦だった。ダービーに先立つ皐月賞をクビ差で制したエアシャカールは、3冠レースの最終戦である菊花賞もクビ差でものにして皐月賞と菊花賞の2冠に輝いた。だがダービーだけは2着。もしダービーで優勝していたならば、史上6頭目の3冠馬はディープインパクトでなく、エアシャカールだったのだ。そのエアシャカールの手綱を取っていたのが武豊騎手だった。日本ダービー史上もっとも多くの勝ち星を挙げているのが5勝している武騎手だ。歴代2位は13騎手が2勝で並ぶ。ダービー5勝は、今後も破られることのない大記録だといわれている。
この天才騎手にしても、ダービーで初勝利を挙げるまでには10戦を要した。1998年に手綱を取ったコンビはスペシャルウィークだった。デビュー前から「ダービーを勝てるのではないか」と確かな手応えを感じていた才能豊かなパートナーだった。ダービーまでに5戦3勝。直前の皐月賞では3着だった。ダービーでは残り200㍍あたりで先頭に立つと、みるみる後続との差を広げ、2着馬に5馬身もの差をつけ、1着でゴールした。元騎手の武邦彦さんを父に持つ2世ジョッキーは、「子どもの頃からの夢でした」とダービー初制覇の感激を口にした。その2年前のダービーでは1番人気のダンスインザダークに騎乗してクビ差の2着に敗れていた。わずかな差で勝利を逃した悔し涙が、2年後の栄冠につながった。「ダービーは1度勝つとまた勝ちたくなるレースです」と武騎手はいう。29歳でダービー初制覇を果たすと、アドマイヤベガ(99年)、タニノグムレット(02年)、ディープインパクト(05年)と30代で3勝を上乗せし、44歳のキズナ(13年)で5勝目を飾った。今年3月に50歳になったベテランは、令和元年のダービーにメイショウテンゲンとのコンビで挑む。これが騎手生活33年目で30回目のダービー騎乗になる。50代のダービージョッキーはまだ出ていない。(有吉正徳)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る