5月15日 山本一力さんが回答します

朝日新聞5月15日14面:相談できる部下、自分のあり方は? 15歳下の部下がいます。彼はとても仕事ができ、私はおかげで楽をさせてもらっていますが、そのせいか、彼の物言いに天狗っぽいところが増えてきました。頭では理解できますが、気持ち的にあまり愉快なことではありません。ぎゃふんと言わせるかと思っているわけじゃないのですが、心をどう持っていったらいいのか、教えていただければさいわいです。(愛知県、会社員・53歳)
よくぞ正直にこの主題で投稿された。なによりも先に、貴兄のこの行動を評価させていただきたい。
男も五十路を超えると、我知らずに動脈硬化を発症することが多い。精神的な動脈硬化のことだ。 年下の者を真正面から評価して称えることが、億劫にもなるものだが。貴兄はそうではない。
十五も年下の部下をきちんと評価し、能力も認めている。それができるだけでも有能な上司だ。
三十初めのころ、グラフィック・デザインの大御所に一年半ほど師事した。師匠から受けた薫陶の数々は、いまも我が身の芯にある。

2016/ 5/15 13:31

2016/ 5/15 13:31

会議の進め方の極意も学んだ。 あの頃、ブレーン・ストーミング(ブレスト)が大流行した。アイデアを出し合う、雑談形式の会議だ。師匠は進め方が卓抜だった。
「いいな、それ…あと少し煮詰めてみろよ、ゴールはすぐ近くだ」ブレストの基本は、相手のアイデアをけなさぬことだ。が、欠点をあげつらうものが少なからずいた。
師匠はそれをせず、粗削りなプランの長所を心底褒めた。
新品の缶ピースを持ち込み、封を切るのが開始の合図だ。両切りのピースの甘い香りが、緊張している面々の気分を和ませてくれた。
ブレスト参加者の多くが師匠を真似て、煙草を缶ピースに乗り換えた。 上司に部下が憧れて結束すれば、組織は強固なること無比である。
部下を認めるには、度量の大きさがいる。貴兄はそれを備えている。
あと必要なことを挙げるなら、貴兄自身の魅力を磨き上げることだ。 池波正太郎さんは、珠玉の隋筆を多数遺された。なかでも『男の作法』は、男ぶりを磨くための指南書だ。
部下は言葉だけでは動かない。逆に上司の立ち振る舞いに感銘を覚えたとき、言葉はもはや無用となる。『池波正太郎のリズム』(展望車・2376円)に遺された次の言葉は、いまもわたしの座右の銘だ。
”言葉だけでは、感謝の気持ちが通じないことは幾らでもある。そんなときのために男の財布はある”
やまもと・いちりき 48年生まれ。作家『あかね空』で直木賞。近著に『ジョン・マン5立志編』
次回は「シノドス」編集長・評論家の荻上チキさんが回答します。悩みを募集しています。住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記し、郵送の場合は104.8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールは dokusho-soudan@asahi.com へ。採用者には図書カード2000円分を差し上げます。

 

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