5日オトナになった女子たちへ

朝日新聞2017年3月3日33面:益田ミリ「千円引き」で見る夢は パジャマを買うことにした。寝るときはずっとスウェットパンツにTシャツだったのだが、就寝用として考えられた服なら、より深い眠りにつけるのではないか? と今更ながら思ったのである。
パジャマを買うなんて何年ぶりだろう。高校の修学旅行以来、とまではいかぬが、かなり前のような気がする。修学旅行の夜に着るパジャマについては、将来の夢を語るくらい真剣に友と相談し合ったものだった。
パジャマは一種の仮装である。買うと決めたらわくわくした。どれにしようかなぁ。ギンガムチェックもいいが、思い切ってピンクはどうだ? 迷った末、淡いブルーに。レジに持っていくと、店員さんが嬉しい一言。「期間限定で千円引きになっております」ええっ、千円?めちゃくちゃ嬉しい! 心に留めておけばよいものを、思わず口から出た。この「思わず」にホッとした。ホッとしたのにはわけがある。
そういえば、先日、友人宅におよばれしたとき、なんか懐かしいなぁと感じた。それは、値段の発表だった。その人の家にあるもの、たとえば花瓶を指して「これステキですね」とわたしが言えば、先方は「あ、それ、〇〇円」という具合に、たいていのモノの値段を教えてくれた。あるいは、安かっただの、高かっただの、情報をくれたのだ。東京で出会った人だがお互いに大阪出身だった。
そうだ、地元にいたときは、わたしもこうゆうふうに暮らしていたっけと懐かしかった。上京後、みな、あまりお金のことを口にしないのに気づいて封印していたが、思わぬ拍子に・・そう、パジャマ千円引きなどに、「ええっ、千円?めちゃくちゃ嬉しい!」が出てきた。自分の中に、まだまだ故郷のリズムが残っていることにホッとした、というわけである。
とはいえ、生粋の大阪人ならばここまで言ったのでは。「この千円でぎちそう買うて帰ろ」とかなんとか。
パジャマは、一旦洗って干しているところ。最初にみるのは、「千円引きや!」と喜んでいる夢かもしれない。(イラストレーター)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る