4月28日 地震報道ネット連携に光 津田大介

朝日新聞4月28日17面:今回の熊本地震では自治体の想定を超える多くの人が避難所に押し寄せた。熊本市内の指定避難所は合計6万人くらいの収容を想定していたが、実際はその倍近くの市民が避難。スーパーの駐車場など指定避難所以外の場所にも人が集まり「事実上の避難所」が多数生まれた。
筆者が取材で訪れた熊本高校(熊本市北区)はその一つである。同校は付近の一時避難場所だったため、地震直後から人が集まった。だが、指定避難所ではないため、数百人が避難しているにもかかわらず食料や水の備蓄がなく、行政からの物資も届かない。危機を感じた被災者たちはフェイスブックを通じて物資の支援を呼び掛けた。投稿は瞬く間にシェアされ、数時間後には物資が福岡から届けられた。最終的にはシェア数は6万を超え、倉庫には支援物資が山積みになった。
同様の現象は熊本県益城町の益城中央小学校でも見られた。ことらも物資の支援要望がツイッターで広まり、程なく大量の物資が到着した。
だが、届いた後も「同校に物資が足りない」というツイートが投稿され続け、現場は混乱した。投稿時は「事実」だった事象が、時間の経過で解決した後も拡散され「デマ」になるー東日本大震災のときにも起きていた現象だ。刻一刻と変わる支援ニーズをソーシャルメディアでどうフォローすればいいのか。今後の課題だ。
課題と言う意味では、今回被災地報道のあり方についてネットから多くの批判が寄せられていたことも忘れてはならない。中でも耳目を集めたのは、地震で多大な被害を受けた益城町の避難所前で被災者と見られる男性から「見せ物じゃない」と詰め寄られるところが民放のニュース番組で生放送されたことだ。ネットではクレームを入れた男性に対する喝采の声が並び、ここぞとばかりにマスメディアの取材姿勢を責め閉てた。
マスメディア叩きの背景には画像や動画を簡単に投稿できるスマホやソーシャルメディアの普及がある。これまでは被災地の現場で”許されていた”取材が当事者から晒され、感情が伝播(でんぱ)しやすいソーシャルメディアを通じて広まることで、マスメディアに対する怒りややじ馬も巻き込む形で増幅それていくのだ。
そんな中、ソーシャルメディアの速度感と双方向性をうまく生かした報道事例もあった。16日、朝日新聞が熊本県内の避難所情報をネットに掲載、ツイッターで「どなたか地図に落としませんか?」と呼び掛けた。これに学生有志グループが反応。グーグルマップ上に避難所情報を掲載する作業を買って出て、同日中にネットで使える避難所マップが完成した。新聞の調査力で検証したデータをネットに提供し、情報ボランティアに落とし込み作業を任せる。これにより情報力を落とさず効率的に情報を多くの人に届けられる。被災地報道とネットの善意が効果的に連携した事例と言えよう。
熊本市の大西一史市長は、市内の漏水箇所を特定するため水が出た場所を写真に撮影し、住所と共に投稿するようツイッターで呼び掛けた。
水道復旧の速度が大幅に上がった。これも行政と市民がネットを通じて効果的に役割分担できた事例だ。
日本のスマホ契約台数は東日本大震災があった11年3月時点で約1千万台、現在は約7万千台だ。ツイッターの国内アクティブユーザーの数も月間670万人から3500万人まで増えた。数字を見れば一目瞭然。この5年間で市民の情報発信力は大幅に増えているのだ。その発信力をマスメディアや行政が生かせるようになったのも震災後の顕著な変化と言える。行政の目の届かない部分を市民が発信して補い、マスメディアの発する情報をソーシャルメディアが強化する。その仕組みを共有し、適切に伝えていく取り組みがあれば、次の災害に生かせるはずだ。(つだ・だいすけ 1973年生まれ ジャーナリスト・政治メディア「ポリタス」編集長)

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