4月25日 振り回される飯館村

東京新聞4月25日4面:「悪いイメージばかりだ」 役場でテレビのニュースを見ていた福島県飯館村の副村長門馬伸市(62)は、吐き捨てるように言った。三月二十日、村の滝下洗浄の水から、大人の摂取基準を超える1リットル当たり965ベクトルの放射性ヨウ素が検出された。翌二十一日に摂取制限が始まったころから報道機関の取材が殺到し、全国の注目が集まっていた。
ニュースで何度も取り上げられる中で、他の地域で出たヨウ素の数値について「飯館村と比べれば低い」と伝える報道があり、門馬は憤った。
他の地域の写真を「ここが飯館村」と誤って紹介した番組もあった。 一方で村の水道水で基準値を超える403ベクトルと450ベクトル。二十二日は344ベクトル。少しずつだが数値は下がっていた。
そして二十三日、東京都の金町浄水場から乳児の摂取基準を上回る210ベクトルのヨウ素が検出されたと明らかになった。 途端にテレビのニュースは「首都圏の水」に関する情報であふれた。
毎日の数値の変動、ペットボトルの水の買い占めが起きている様子。 飯館村に関するニュースは減った。村は汚染されたイメージのまま放置されたようだった。 村長の菅野典雄(64)はそうしたニュースを、やるせない気持ちで眺めていた。飯館村の水道水の数値がどれだけ下がったか、取り上げられることはなかった。
「東京だけに人が住んでいるわけじゃないだろうに…」 菅野はさらに打ちのめされることになる。 今度は村の土壌からヨウ素が1キロ当り171万ベクトル、セシウムが16万3千ベクトル検出されたとの文部科学省の調査結果がニュースで飛び込んできた。村には事前に何の知らせもなかった。
「東京も大変なのは分かる。でも何が何だか分からない『放射能』の中でもがいている私たちに、ただ騒ぐだけでなく、フォローがほしかった」 菅野はそう言って唇をかむ。
飯館村は、村の外れが福島第一原発の30キロ圏内に入るが、ほとんどは30キロ圏外だ。 政府はその30キロで円を描き、内側と外側で「安全」を区切った。だが約一カ月後、その円が大きくゆがみ、飯館村全域が避難指示区域となる。
善村民が飯館村を離れなくてはいけないー。 そんな日が来ることを、菅野は想像もしていなかった。(敬称略。年齢、肩書は当時)

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