30日てんでんこ 福島に住む2

朝日新聞2017年3月28日3面:家族で一緒にいられる時間は警視庁時代よりも増えた。昨年末、次男が生まれた。 福島県警北会津駐在所の中井大介(34)は東日本大震災があった6年前、東京都小平市にある警視庁小平署の交番勤務だった。周りには住宅や飲食店が立ち並んでいた。
岩手県二戸市で生まれた。大学卒業後、仙台市の中学校で数学講師を務めていた。警察官だった兄の影響を受け、27歳のとき、警視庁に入った。
震災で、岩手の友人の婚約者が津波に流され亡くなった。「被災地のために自分ができることはないか」と勤務を希望し、2013年4月に福島県警に出向した。海岸での行方不明者の捜索に加わったり、福島第一原発に近い帰還困難区域をパトロールで回ったりした。泥棒に入られ、窓ガラスが割られて室内の引き出しをすべて開けられていた家もあった。
いつ、もとの姿に戻れるのか。気が遠くなる思いがした。福島での勤務が1年過ぎだ14年7月、上旬から「転籍もできますよ」と言われた。警視庁に戻るつもりだったが、「このまま投げ出していいのか」と迷った。
だが、放射線量が気になる場所もある。長男の悠人(ゆうと)が生まれたばかりだった。結婚3年目の妻、由華(34)に相談すると、こう言葉が返ってきた。「そうだよね。少し不安かも」東京では夫婦で買い物や映画鑑賞を楽しんでいた。地方だと、その便利さも失われる。半年間、話し合ったが決められない。
上司との面談の日の朝、由華はこう言って夫を送り出した。「大ちゃんの好きな方でいいよ。私はついていくから」帰還困難区域で見た光景を頭に浮かべながら、中井は上司に伝えた。「福島で働きたいです」
正式に福島県警の警察官となった中井が配属されたのが、会津若松市にある北会津駐在所だった。2階建ての事務所には、自宅が併設されている。家族で一緒にいられる時間は、警視庁時代よりも増えた。駐在所の前に雪が積もると、2歳になった悠人は中井と雪合戦ではしゃぐ。昨年12月、次男の奏太(そうた)が生まれた。(石塚大樹)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る