30日てんでんこ 皇室と震災【5】

朝日新聞2017年5月27日3面:魚類学者でもある天皇陛下。理科年表を愛読し、過去の地震にも詳しかった。 東日本大震災発生から土日をはさんだ2011年3月14日。「忙しい時だろうからワーキングランチにしましょう」と声がかかり、当時の羽毛田信吾・宮内庁長官(75)と川島裕侍従長(75)は天皇・皇后両陛下が暮らす皇居・御所で両陛下と昼食をともにした。
12日に東京電力福島第一原発1号機が爆発。原発が危険な状況が続く中、14日から計画停電が始まることになった。ワーキングランチの席上、宮内庁でも節電する方針とし、御所でも計画停電の時間に自主的に電力使用を停止することを決めた。
しばらく宮殿を閉鎖し、外国大使の信任状奉呈式や大臣らの認証式など国事行為に限っては宮殿で儀式を行うが、それ以外の行事は取りやめるか、御所で行うこととした。災害対策に忙殺されている警備当局に負担をかけないよう、演奏会や美術展の鑑賞や、地方での静養など、予定されていた日程を延期したり取りやめたりした。
代わりに、被災地訪問の検討が始まった。両陛下からは「被災者を慰め、救援活動従事者をねぎらうなど、人々の心の支えになれば、いつでも現地を訪れたい」との気持ちが示された。ただその時点では「まずは救助活動に全力をあげるべきだ」との認識であり、訪問時期は「内閣や被災地の県知事ら関係者の判断を待って考えたい」とのことだった。
ハゼなど魚類の分類学者でもある天皇陛下は「理科年表」の愛読者で、過去の地震についても詳しかった。羽毛田長官と話した折、津波の規模は平安時代(869年)の「貞観地震と同じ」と指摘した。1993年の奥尻島訪問の経験から「津波の高さは地形によって異なる」ことにも触れた。避難が遅れて多くの犠牲者が出た教訓から「津波からどう逃げるかが重要」と強調。「避難の仕方によって明暗が分かれた。将来も同じ轍を踏まないよう、将来の被害を最小限にするにはどうしたらいいか、学ばなければ」と語った。
両陛下は15日、前原子力委員長代理の田中俊一氏(75)を御所に呼んで原発の安全性について聞いた。警察庁の安藤隆春長官(67)からは震災の被災状況と救助活動などについて聞いた。この日を皮切りに、地震や津波、原発、医療などの省庁関係者や専門家を次々と御所に呼ぶようになる。(北野隆一)

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