3日てんでんこ 皇室と震災【8】

朝日新聞2017年6月1日3面:皇宮警察音楽隊が「川の流れのように」を演奏。泣き出す被災者が続出した。
宮内庁庁舎は1935年に建てられ、空襲にも焼けずに残った。庁舎は地下の基礎部分に杉の丸太が多数埋められて補強されており、2011年3月11日はかなり揺れてきしむ音もしたが、建物は無事だった。
当時、宮内庁管理課長だった和地国夫さん(64)は庁舎1階の課長室にいた。午後5時半から羽毛田信吾長官(75)以下、関係課長が集まり、被害状況を確認した。儀式や行事が行われる宮殿も、宮中祭祀が行われる木造の宮中三殿も、95年の阪神大震災の教訓で耐震補強などの対策がとられ、無事だった。
機内では、宮殿への正面入り口となる正門の瓦が落ちていることがわかった。警視庁に近い桜田濠の石垣付近に地割れができた。庭園課長だった北沢克己さん(58)は、皇居や全国の御用地にある樹木や庭園の状況を調べた。大道庭園の盆栽には、樹齢数百年以上のものも多くあったが、ふだんから台に固定されており、無事だった。東京都文京区の豊島墓地では石灯籠が軒並み倒れ、重機で組み立て直した。
一方、栃木県の御料牧場の貴賓室と集会所の建物には大きな被害が出た。飼っている牛や馬など動物は無事だったが、加工場の機械が壊れ、皇室や宮内庁食堂に届けている牛乳の加工ができなくなった。
多くの観光客が訪れる皇居東御苑は震災当時、休園日で訪問者はいなかった。入り口の大手門の白壁が一部崩落し、一時休園したが、応急処置をして19日から再開した。
ただ、当時は福島第一原発の事故の影響で計画停電などの混乱が続き、東御苑の参詣者は少なかった。和地さんは羽毛田長官に「福島から東京に来た避難者を東御苑に招きましょう」と提案した。翌4月から、月曜と金曜の休園日に避難者を招く見学会を4回実施した。1回は天皇、皇后両陛下が、もう1回は皇后さまが参加者を見舞った。
見学会では、皇宮警察音楽隊が「世界に一つだけの花」や「負けないで」などを演奏した。美空ひばりの「川の流れのように」を奏でたところ、泣き出す参加者が続出したため、次の会からこの曲は外した。
当初は屋外での演奏だった。「避難している人の体を考えて」との皇后さまの気持ちが伝わり、6月に開いた4回目の見学会は、屋内での演奏となった。(北野隆一)

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