3日 105歳私の証あるがまま行く 日野原重明

朝日新聞2017年4月1日be9面:不安解消のための「最初の一歩」 私は60年以上前から、病気の兆候を素早く見つけられるよう、人間ドックの普及活動に務めてきました。しかし、健康診断などのタイミング以外でも「何となく最近、体調がすぐれない」などと不安になることがあります。自分で原因や病名を推測することは難しいものです。何科に行けばいいのかわからない、はっきりとした症状や痛みを言い表せないこともあります。
このような場合、総合病院は敷居が高い、と感じる方もいらっしゃるかも知れません。内科医の私がお勧めしていいるのは、最寄りの一般内科や心療内科に、自分の仕事や日常生活の状況などをよく相談し、紹介状などを得た上で、総合病院にある一般内科あるいは総合外来など、病気全体を総合的に判断してもらえる科にかかるルートです。
もちろん、総合病院に行けば即座に「正解」にたどり着けるとは限りません。けれど、不安を抱えたままでは、不安は不安のままです。気になる不調があれば、いつものお医者さんに、踏み込んで相談してみてはいかがでしょうか。それが問題解決の第一歩となるはずです。
たとえるなら、エスカレーターにおそるおそる足を置く、一歩目にようなもの。上手に乗れてしまえば、原因の究明、対処・・と、少しずつでも不安の解消を目指して、おのずと視界が開けてうくのではないかと思います。
現代の総合病院が目指し、体現している価値観の一つに「全人的医療」があります。私が尊敬するウィリアム・オスラー医師は、病む臓器だけにとらわられず、人間の体と心と魂の三者を一体と考える、全人的医療の基礎を築いた人物です。私は1948年に彼の伝記を刊行し、いまも「医学するこころ オスラー博士の生涯」(岩波現代文庫)で読むことができます。彼は症状を知るだけでなく、医師として患者に真摯に寄り添い、心の奥まで深く観察しました。医学の殻に閉じこもるものではなく、哲学、心理学、宗教学などあらゆる書物や思想に接していた医師だからこそ、できたことだと思います。
皆さんが勇気を出して最初の一歩を踏み出し、エスカレーターを昇った先に、オスラー医師のような人物が待っている。それが理想的な医療のあり方なのかも知れません。(聖路加国際病院名誉院長)

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