29日 自撮り感じたまま表現

朝日新聞2017年3月27日35面:「くじけた感じが好き。人生も面白いほうがいい」写真家 西本喜美子さん(88)
ごみ袋に自ら入るなど奇想天外な「自撮り」写真で国内外で注目される写真家の西本喜美子さん。72歳で写真講座に通い始め、88歳の今も新たな表現に挑む原動力や写真の魅力について聞きました。
ずしりと重いニコンの一眼レフカメラを三脚にセットし、いすに座りファインダーをのぞく。「馬具をはめているよう」と笑う腰痛防止のコルセットで動きにくい。それでも丸い背中をかがめシャッターを切る。
熊本市で一人暮らしをする自宅の一室が「スタジオ」だ。庭に落ちていた鳥の羽根や食材のエビのしっぽ・・。
身近な素材が「カメラを通すと宝石に見える」。その鋭いまなざしは、こたつにちょこんと入っていた愛嬌のあるおばあちゃんとは別人のようだ。
美容師、競輪選手を経て27歳で結婚。3人の子育てに専念した。転機は72歳の時。長男が主宰する写真講座の受講者から誘われ、行ってみた。「さあ、撮んなさいと言われても『えっ、どうしようかな』と思いました」。ペットボトルや花を構図を変えて撮ってみると、上手ではないけれど、生き生きして見えた。
どうすれば面白く撮れるかを考えるのが楽しくなった。パソコンで加工する技術も講座で習得。幻想的なデジタルアート作品は県主催の公募展で4回賞を受け、82歳で個展を開いた。「自撮り」作品が注目され始めたのもこのころだ。自分で自分を撮る面白さと恥ずかしさを感じる、という課題が講座で出された。ふと、自宅の三輪のゴミ袋が目にとまった。「自分が入ったら面白いかな」。さっそく試した。苦労したのは表情。笑いをこらえて何度もやり直し、哀愁を帯びた表情の1枚に納得した。
カエルに変装したり、物干しざおにかけたコートに両手を通し、人も干されているように見せたり。「感じたままを表現した」という作品はネットで広がり、海外からも「笑い死ぬかと思った」などの反響が相次いぐ。「きちっとした写真よりくだけた感じが好き。人生も同じで面白く過ごしたほうがいいんですもんね。気を許し合えるでしょう?」
夫を約4年前、肺がんで亡くした。病室で看病中もカメラを手放さなかった。今は月2回の写真講座で仲間と話し、講座後にバーでバーボンを飲みながら共に過ごすのが最高の時間だ。昨年、フォトエッセーを出版し、今月あった講座の写真展には自撮りの新作を出品した。「体が思うように動かんのが一番悔しい。でも、大事なのはやる気。何をするにも年齢は関係ない。写真はずっと撮り続けます」(森本美紀)

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