28日 池上彰の新聞ななめ読み

朝日新聞2017年2月24日17面:政治家の発言監視必要 トランプ米大統領が誕生してアメリカで流行語となった言葉が二つ。「オルタナティブ・ファクト」と「フェイクニュース」です。「オルタナティブ・ファクト」とは「もうひとつの事実」という意味です。大統領就任式の観客数について「オバマ大統領の就任式より少なかった」とメディアが報じたことに対し、大統領報道官は「過去最高だった」と批判しました。この発言について、テレビ番組で追及された大統領顧問は「報道官はオルタナティブ・ファクトを述べた」と言い張りました。
驚くべき発言です。時事でないことを「もうひとつの事実」だと言い張るのですから。
ところが、日本の国会でも「オルタナティブ・ファクト」が語られました。自衛隊が国連平和維持活動(PKO)で派遣されている南スーダンで昨年起きた事件について「戦闘」ではないかと問われた稲田朋美防衛相は「国際的な武力紛争の一環として行われる人の殺傷や物の破壊である法的意味の戦闘行為は発生していない」と強調しました。
銃撃戦が起きていても「法的意味の戦闘行為は発生していない」。まさに「オルタナティブ・ファクト」ではありませんか。トランプ大統領の側近を笑っていられないのです。
では、もうひとつのフェイクニースはどうか。こちらもアメリカは凄いですね。2月16日、トランプ大統領は記者会見を開き「フェイクニュース」という言葉を連発しました。たとえばトランプ氏の陣営が、選挙期間中に、ロシア側と電話でやりとりしていたという報道について「フェイクニュースだ」と否定。その一方で、こうした情報が情報機関から漏洩したことを調査すると言ったのです。
漏洩が事実であることを認めながら、それを報じることはフェイクニュースになる。支離滅裂です。
この記者会見を報じた「ニューヨーク・タイムズ」は、「ファクトチェック」(時事確認)のコーナーで内容を検証しました。たとえばトランプ米大統領が「ロナルド・レーガン以来最大数の大統領選挙人を獲得した」と述べた点について、オバマ大統領もクリントン大統領もブッシュ(父)大統領もトランプ氏より多くの選挙人を獲得していると、トランプ大統領発言のウソを指摘しています。
このファクトチェックの手法を朝日新聞も採用すると2月10日朝刊で明らかにしています。
<「内容は本当か」という疑問がある▽「ミスリードかもしれない」という印象を与えるーなどの基準にもとづき、政治家の発言を随時取り上げます>と告知しています。
そこで取り上げたのが、安倍首相の1月20日の参院予算員会での発言でした。憲法改正について問われると、「具体的な案については憲法審査会で議論すべきだというのは私の不動の姿勢だ」と述べ、「どのような条文をどう変えていくかということについて、私の考えは(国会市議の場で)述べていないはずであります」と答えています。
これについてファクトチェックで「誤り」と指摘。実際には2013年2月の衆院予算員会で憲法改正手続きを定めた憲法96条について問われ「3分の1をちょっと超える国会議員が反対をすれば、指一本触れることができないということはおかしいだろうという常識であります。まずここから変えていくべきではないかというのが私の考え方だ」と答弁していたことを掘り起こしています。
また、1月20日の施政方針演説で「兼山のハマグリは、土佐の海に定着しました。そして350年の時を経た今も、高知の人々に大きな恵みをもたらしている」という発言について「言い過ぎ」と判定。高知県漁業振興課によると、15年のハマグリの漁獲量は約400キロ、60万円相当で「大きな恵み」にはほど遠かったと指摘しています。
メディアが発言をいつも監視すること。それが、政治家に無責任な発言をさせない効果を発揮します。

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