28日 安保法・「共謀罪」・・採決強行続く国会

朝日新聞2017年6月26日3面:言論の府は自滅したのか 18日閉会した国会で自民、公明の与党は、異例の強行手続きを使って「共謀罪」法を成立させた。特定秘密保護法、安全保障関連法、カジノ解禁法。2012年末の第2次安倍政権発足以来、会期末になると野党が反対する「対決法案」を与党が採決強行で成立させるケースが際立つ。問答無用の決着を辞さない国会の姿は、行政府を抑制する役割を放棄し、その権威や誇りを自ら捨て去ってしまったように見える。
野党の指摘 耳傾けぬ政権 そもそも国会に「熟議」は期待できるのか。犯罪を計画段階から処罰する共謀罪法の審議では、だれが処罰の対象となるのか、何をしたら罪になるのかがあいまいだと野党は繰り返し指摘した。
政府の法案に問題があれば、審議継続や修正、あるいは廃案にするのが議会本来の役割だ。ただ、日本の国会では、自民は野党の指摘には耳を傾けず、政府案をそのまま成立させることに固執する。国会提出の前に党の政調部会などで「事前審査」をすませてしまうからだ。
議員はここで、支援を受ける業界団体などの意向をもとに自由に意見が言える。また、審査を通れば国会での採決では党議拘束がかかるため、政府は成立を確実に見通せる。政府、与党双方にメリットのある制度なのだ。
共謀罪法案でも、政府は公明党の要求を受け、国会提出前に対象となる犯罪の数を676から277い減らした。もともと議院内閣制で政府との一体性が強い与党にすれば、国会では政府案のまま成立させるのは当然で、野党の要求で修正するなど論外だとの意識が根強い。野党がいくら本質を突いた指摘をしたとしても、政府は同じ答弁を繰り返し、ひたすら「採決の環境が整った」と言えるだけの時間が過ぎるのを待つ。
共謀罪法を審議した衆院法務委員会の逢坂誠二理事(民進)は「丁寧な議論をしたかったが、やればやるほど時間は積み上がり、いつ打ち切られるのかという恐怖感の中で質疑を強いられた」と振り返る。
衆院採決を前に、与党は日本維新の会と法案の一部修正で合意した。ただ、与党だけでの採決強行との非難をかわす狙いは明らかで、熟議の末の結論だったとは言いがたい。
勢力大差 妥協の機運消失 それでも「自民対社会」の与野党対立の構図が固定化していた55年体制のもとでは、自民にも余裕があった。1970年代に参院議長を務めた故河野謙三氏は、国会運営では野党に7割配慮し、少数意見も尊重する「七・三の構え」を説いた。55年体制が崩壊した後も、与野党の伯仲や衆参のねじれ、二大政党化の進展といった時々の政治情勢を受け、与野党が修正案を持ち寄って重要法案を成立させたことはある。98年の金融再生関連法案、2003年の有事関連法案などがその例だ。
ところが、最近は与野党間の妥協や合意がしにくい環境になった。衆院小選挙区制の導入で政党間の対立が激しくなってきたこと、最大野党の民進の議席が衆院で自民の約3分の1、参院で半分以下しかないことが主な要因だ。かつて民主に政権を譲り渡した苦い経験から、政府・与党は民進には極めて敵対的な姿勢を取る。安倍晋三首相が予算委員会なおで見せる攻撃的な答弁やヤジはその典型だ。「妥協の機運が失せたことが採決強行の増加につながっている」と中北浩爾・一橋大教授(政治学)は見る。
参院だけでも勢力が伯仲していれば政権も少数派に配慮せざるを得ないが、今はその状況にない。実際、安倍政権が採決強行を連発し始めたのは13年夏の参院選で衆参ねじれを解消した後から。「1強」政治がなせる業だ。
分断招く多数決主義 安倍首相は「決める時には決めなければいけない。それが民主主義のルールだろう」と繰り返す。確かに、安倍氏が首相に返り咲く前の数年間、私たちはねじれ国会や民主政権のつたない政権運営による「決められない政治」の惨状を見せつけられてきた。
だが、ただ決めればいいというのもまた極論だ。民主主義で大切なのは、結論にいたるまでの過程だ。共謀罪法の審議では「一般人は捜査対象になるか」といった核心部分で金田勝年法相ら政府側の答弁は迷走。手続き面でも与党は先に提出された刑法改正案の審議を後に回し、法務省刑事局長の法務委出席を多数決で決めるなど、国会の年長の慣例すら壊した。
そのあげくに与党は参院法務委では採決をせず、本会議での「中間報告」をもとに可決・成立させるという奇策をとった。「国会のルールで認められている」(二階俊博・自民党幹事長)としても、強行突破であるのは間違いない。多数決の研究で知られる坂井豊貴・慶大教授(社会的選択理論)は「集団で物事を決めるには、なるべく多くの人が納得できる理屈が求められる。ところが、理屈で少数派を説得することもなく、とにかく多数決で決めればいいという政府・与党の姿勢は多数決の誤用だ」と指摘する。
首相に批判的な村上誠一郎・元行革相(自民)も「民主主義でこわいのは、たとえ間違っていても多数意見が正義となってしまうことだ」と警鐘を鳴らす。安倍政権の姿勢を見ると、強引な多数決主義が憲法改正の議論に持ち込まれるのではないかとの懸念がぬぐえない。
首相に近い古屋圭司・党選対委員長は、憲法をそう改正するのかは「採決でいいかもしれない」と話す。首相が改正憲法の施行は2020年と期限を切る中での発言は、合意が得られなければ時間切れを理由に採決強行に踏み切るつもりだと受け止められても仕方ない。
憲法改正には、国民の幅広い合意が欠かせない。多数決の理論を押し通せば、社会の分断を固定化する不幸を招きかねない。

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