26日 てんでんこ 南海トラフ 7

朝日新聞2017年2月22日3面:「どうせ私は逃げないよ」。避難行動の聞き取り調査で断れ続けた。 「どうせ私は逃げないよ!」。住民の女性に一喝され、ドアを閉められた。また、だめだったかー。京都大学の大学院生、中居楓子(26)はその場に立ち尽くした。
2012年11月、高知県黒潮町沿岸部にある万行地区。修士課程1年だった中居は津波避難の聞き取り調査に回っていた。質問は、自分や家族の職業、年齢、地震時の避難先、自宅耐震化の有無、親族が近くに住んでいるかなど15項目にわたる。津波が襲ったときの住民一人一人の動きや被害を予測して、避難対策を検討するのに必要だった。
県の想定では、万行地区への津波到達時間は最短20分。健脚でも、最も近い高台まで20分近くかかる。地区の3人に1人が60代以上。津波浸水時の深さ10メートルに対し、地区の避難タワーは8メートルしかない。後に14メートルのタワーが新設されるまで、町役場の中でも「避難困難区域」と呼ばれていた。
調査を京大に提案したのはNHKの高知放送局だった。専門家に対策を練ってもらい、住民が実行する様子を番組にする。記者の中丸憲一(41)は「問題を報じるだけではなく、解決策も示したい」と考えた。防災進学を専門にする矢守克也(53)、ITを生かした災害対策を研究する畑山満則(48)の京大教授2人に協力を頼んだ。
中居はこの年、奨励金がもらえる学内の教育プログラムに応募、採用された。必修とされた活動の一つが「地域や企業との連携」。「条件に合う」と畑山に勧められ、「高知は行ったことはないし面白そう」と取り組んだ。
初日は中丸と、翌日からは1人で調査した。だが、応じるのは5軒に1軒ほど。「変な人が来た」とうわさが広まり、「忙しい」「そういうのはちょっと」と断れ続けた。「別の大学に頼まれてアンケート用紙を配ったが、その後、連絡もない。調査するだけで、地域に何もしてくれない」。後に別の地区で聞かされた話には心底うなずいたが、当初は調査を進めることしか頭にはなかった。
不在の家も多く、数十軒回って回答ゼロの日も。滞在先の宿から出るのも気が重い。休憩に使わせてもらった集会所に戻るたび、畳にぐったりと横になった。(佐藤達弥)
備え 一人一人の事情を把握しないと、全員が助かる対策は立てられない(矢守克也教授)

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