26日 「がん対策推進基本計画」10年

朝日新聞2017年5月23日26面:治療・暮らしどう変わった 国のがん対策の基本方針「がん対策推進基本計画」が2007年にできて10年。治療体制が整えられ、緩和ケアや患者の就労対策などの取り組みも進んできた。この夏には第3期の計画が策定される。これまでの目標や改善点、今後の課題を紹介する。
課題への取り組みは 緩和ケア充実推進 仕事との両立支援 日本人の死因第1位であるがんへの対策を強化しようと2006年に「がん対策基本法」が成立した。これに基づて翌07年に作られたのが、第1期のがん対策推進基本計画だ。07~11年度の計画で、国民の視点に立つことと、医療や予防、研究といった様々な分野を総合的に実施することを基本とする。
10年間の全体目標は▽75歳未満のがん死亡率を20%減らす▽全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上ーとした。12年には、第2期(16年度まで)の基本計画ができ、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が全体目標に加わった。
重点的に取り組み課題として▽放射線や抗がん剤による化学治療法の充実とそれぞれの専門医の育成▽がんと診断された時からの緩和ケアの推進▽患者のデータを集めて対策や検診に生かす「全国がん登録」の推進―をあげた。第2期計画では、重点課題に、「働く世代や小児へのがん対策の充実」が追加された。仕事と治療の両立が困難な現状に対応しようと社会保険労務士やハローワークと連携した支援をしている。数が少ない小児がん患者が適切な医療を受けられるように、と13年には、全国の15施設が小児がん拠点病院に指定された。
国立がん研究センターがん対策情報センターがん医療支援部長の加藤雅志さんは「それまで優先度が高くなかった緩和ケアの充実に、基本計画ができて目が向けられた意義は大きい。2期計画では、がん患者が仕事を続けるにはどうすべきかという新たな課題に向き合い、社会の対応は変わり始めた」と振り返る。
死亡率減・受診率 目標半ば 掲げられた数値目標は達生できたのか。死亡率を減らす目標には届かなかった。年齢構成を調整してそろえた死亡率が年齢調整死亡率。人口10万人あたりの75歳未満のがん年齢調整死亡率は、2005年の92.4から15年には78.0に減ったが、20%減にあたる73.9には及ばなかった。
基本計画は、がん検診の受診率の目標値を50%(胃、肺、大腸は当面の間40%)としている。無料で検診を受けられるクーポン券の配布や普及啓発活動の効果もあり、受診率は上昇傾向だが、目標には達していない。13年の調整では、男女合計で胃がんは39.6%、大腸がん37.9%など40%以下だった。
たばこについて、第2期計画は10年時点の成人の喫煙率19.5%を10年間で12%に下げる目標を掲げた。減少傾向にあるものの、15年時点で18.2%で、あまり下がっていない。
地域格差をなくし、どこでも一定レベル以上の治療を受けられることを目標とする施設整備は、一定程度進んだ。地域のがん医療の中心となるがん診療連携拠点病院などは、今年4月1日時点で全国に434施設。肺、胃、大腸、肝臓、乳の5大がんについて、各地域で標準治療を受けることができるようになった。
静岡県立静岡がんセンターの山口建総長は「拠点病院が整ったことで、標準治療を受けられる全国の病院が明確にされた。患者の選択が可能になり、がん医療レベルの向上に役だった」と分析する。拠点病院には、がん患者の相談に応じ、情報提供をする「がん相談支援センター」も設置されてきた。
今夏策定の第3期計画は 個人に遭った医療めざす この夏をめどにできる第3期計画は、これまでとどう変わるのか。全体目標は「いつでも、どこでも安心・納得できるがん医療や支援を受けられる」が軸となりそうだ。
「予防」「医療の充実」「がんとの共生」を三つの柱とする。
全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は全体目標について「各地で主要ながんについては標準治療を受けることができるようになったが、治療やケア、相談支援体制の質には、病院間でばらつきがある。真の意味でのがん医療の充実はこれからだ」と期待を込める。
希少がんや小児がんへの対応や、就労を含めた社会的な問題は引き続いて重要な課題となる。個人の遺伝情報を基にするゲノム医療を推進し、個人に合った医療の実現も目標に盛り込まれる。医療技術の進歩とともに、個人に最適化された医療が求められるようになった。
死亡率減の数値目標は今回は設けない方針だ。一方で、緩和ケアをどこでも受けられるようにし、「痛みがある」とする患者を減らす数値目標を検討している。体や心の苦痛が十分軽減できていない患者が、3~4割いるという厚生労働省研究班の調査結果もあり、さらなる対策が必要と指摘されてきた。
がん対策推進協議会のメンバーで「CSRプロジェクト」の桜井なおみ代表理事は「過去の目標の評価や検証をきちんとする必要がある。基本計画によって、患者の声が反映され、診断から治療、その後と患者目線の連続したがん政策がとられるようになった。届いた患者の声を検証する時期を迎えているので、取り組んでいかねばならない」と話す。(服部尚)

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