24日 銀行カードローン【上】

朝日新聞2017年4月19日9面:転落きっかけは10万円 融資額上限なし増え続ける破産者 転落のきっかけは、ネット銀行に10万円の借り入れを申し込んだことだった。東京都内の元会社員の男性(57)は2013年秋、母親のがん治療費などですでに複数の消費者金融などから計100万円超の借金があった。返済がきつくなり、ネット銀行のカードローンを頼った。ネットで申し込むと、審査は驚くほど簡単に通った。収入証明書も不要だった。
融資枠はキャンペーンなどの誘い文句で増え、借入額は半年で200万円超に。他の銀行でも借り入れを重ねた。手取り20万円余りだったが、毎月の返済額は十数万を超え、行き詰って今年1月、自己破産を申請した。「最初に借りたときはありがたいと思った。でも抜け出すのは難しかった。本当にバカでした」と男性は話す。
債務整理にあたった森川清弁護士は「社会福祉協議会の資金貸付制度などを使えば、破産せずに済んだ可能性がある」と言う。公的支援を知る前に、街にあふれるカードローンの宣伝に触れ、「安易に借りて後戻りできなくなる人が増えている」とみる。
この10年で、無担保の個人向けローンを巡る環境は大きく変わった。最大の貸し手だった消費者金融は多重債務が問題視され、06年の貸金業法改正で融資総額を「年収の3分の1以内」に規制された。利息制限法の上限(20%)を超える「グレーゾーン」金利は撤廃され、「過払い金」の返還請求で業績も悪化した。
代わって貸し出を伸ばしたのが、銀行のカードローンだ。銀行は貸金業法の規制外で、融資額の上限はない。タレントを使った広告で、1千万円という高額な融資上限をアピールするケースもある。貸付残高は消費者金融を上回り、16年末は約5.4兆円と、消費者金融などの約4兆円との差を広げている。埼玉県の男性(53)は病気で仕事を辞めた直後の13年夏、「宝くじに当たった」という詐欺メールで計800万円をだまし取られた。そのうち400万円は銀行がわずか1ヵ月のうちに貸し付けた。今年1月に自己破産を申請。「仕事を失い、まともな判断ができなかった」と男性は話す。
別の40代の会社員男性は、競馬などで複数のカードローンの借金が1千万円を超えていた。そこへ15年初め、付き合いのない地銀から電話がかかってきた。「金利が安くなる」と勧められた「まとめローン」で、1千万円を年利10%で借りた。他の借金はいったん返済した。しかし男性は競馬をやめれず、他の銀行からまた借り始め、借金総額は年収の3倍超の2600万円に膨らんだ。個人再生手続きをした三上理弁護士は「銀行は男性の返済能力をきちんと審査せずに貸し続けたのではないか」と話す。
債務整理に取り組む弁護士らは、銀行カードローンの急増が、再び多重債務問題を起こしつつあると懸念する。個人による自己破産申立件数は昨年、13年ぶりに前年より増えた。銀行による多額の貸し付けが影響している可能性がある。
日本弁護士連合会は、銀行にも消費者金融と同様に、融資額の規制をかけるよう求めている。これに対し、全国銀行協会の小山田隆会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は「一律に規制すれば利便性を損ねる」と規制強化に消極的だ。「利便性」の内容について、3日の記者会見で問われた小山田氏は明確には答えなかった。
低金利の環境下でも高利で貸せるカードローンに、各銀行がこぞって参入している。その陰で何が起きているのか。2回にわたって報告する。
(藤田知也)

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