23日てんでんこ 皇室と震災【20】

朝日新聞2017年6月20日3面:どんな小さな被災も見落とすまい。「ありのままの現場を見たい」 2015年10月1日、天皇、皇后両陛下は関東・東北豪雨で被害を受けた茨城県常総市を訪れた。被災からわずか20日ほど。鬼怒川の決壊現場に近い三坂町地区は、家屋や電柱がなぎ倒され、地面がえぐられていた。
濁流の勢いを物語る現場で、両陛下は手を握り合い、支えるように歩みを進めた。崖のようになった道の先端までも歩いた。居合わせた関係者が心配の声をあげたほどだ。 常総市長だった高杉徹さん(63)によると、足場の悪い被災現場は危険が伴うため、慎重な意見もあった。だが、「ありのままの現場を見たい」という両陛下の強い意向を知り、被害の大きかった場所を手を加えることなく見ていただくことになったという。
視察時は小雨が降っていた。両陛下は傘を手に被災現場を見て回ったが、犠牲になった男性の遺体発見場所を案内されると、傘をたたみ、黙礼した。その後、案内をする高杉さんが傘をさしていないのに気付くと、天皇陛下は側近らに傘を持ってくるよう促した。皇后さまの髪が雨で乱れた際には、天皇陛下が手で直すような場面もみられた。
続いて、約180人が避難していた施設「水海道あすなろの里」を訪れた。代表者6人と懇談した後、返納陛下は「大変だと思いますが、こえから復興に向かって進んでいかれますよう願っています」と声をかけた。施設には多くの人たちが待ち受けていた。両陛下は予定のコースを変えてすぐそばまで歩み寄り、ボランティアで食事を提供していた女性には「疲れていらっしゃる時に喜ばれるでしょうね」とねぎらった。
両陛下は小さな被災も見落とすまいと新聞やニュースをチェックしている。あまり注目されなかった自然災害について、陛下が発生後しばらくたってから尋ね、側近らが驚いたこともあるという。天皇陛下は皇太子時代の会見で座右の銘を聞かれ、論語の一節になる「忠恕」(ちゅうじょ)を挙げた。まごころと思いやりを意味する言葉だ。「なぜ陛下が何度も被災地に足を運ばれるのか。まさに忠恕の精神なんだと思います」。長く仕えた側近はそう語った。(島康彦)
◇「皇室と震災」第1部これで終わります。

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