20歳の試練【2】

朝日新聞3月16日30面:愛知県扶桑町に住む病院職員広田圭さん(33)は大学生だった20歳のとき、精巣がんと診断された。がんは腹部のリンパ節と肺にも転移しており、2003年5月、実家がある三重県の総合病院で右精巣の摘出手術を受けた。
5月末から抗がん剤治療が始まり、吐き気などの副作用に悩まされ。髪が抜け、やせた自分の姿を見るのが苦痛だった。治療のゴールが見えない状況が続く。病室で天井を見つめて思った。「俺いったい何してんのやろ…」 授業やアルバイト、飲み会。当たり前のはずの大学生活が遠く、仲間がうらやましく思えた。テレビをつけても、同世代の芸能人やスポーツ選手の活躍が目につく。 「これ以上心配をかけたくない」と思い、両親や弟には弱音を吐かなかった。友人たちには、治療が3ヵ月目に入った頃、精巣がんの治療中であることを打ち明けた。とまどう様子が電話越しに伝わってきて、申し訳ないような気持ちになった。 抗がん剤治療をしても、肺や腹部の腫瘍は残った。03年秋に愛知県がんセンター(名古屋市)に転院。その後、両肺と腹部の腫瘍を切除するため、計4回の手術を受けた。
04年初夏、約1年ぶりに大学2年生に復学。元気だったころに比べて体重は約15キロ減り、抜けた髪の毛も生えそろっていなかった。ニット帽やキャップをかぶり、人目を避けるように授業を受けた。 「もう一度与えられたチャンス。一日一日を大切に生きよう」。大学近くの病院で毎月定期検診を受けるたび、ふだんの生活が試されているように感じた。夜更かしを控え、食生活に気を付けた。周囲への気遣いも心がけた。日常の良いところも嫌なことも、感じられることがありたがった。
がんの診断前は「3年生になったらみんなと同じように就職活動しようか」と漠然と考えていた。
「病気を経験したからこそ、できることをしたい」。進路についての考えも変わり、病院で働く医療ソーシャルワーカーを志した。 07年に大学を卒業。愛知県の専門学校に1年間通い、社会福祉士の資格を取った。「病気で困っている人の助けになりたい」と思った。

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