20日てんでんこ 皇室と震災【18】

2017年6月16日3面:両陛下の周りに人だかりができた。被災者は「距離の近さを感じた」。 2016年5月19日、204人が避難する熊本県益城町の益城小学校体育館。お見舞いを終えた天皇、皇后両陛下の周りに被災者が集まり始め、あっという間に人だかりができた。握手を求められたり、携帯電話で撮影されたり。両陛下と被災者たちの距離が、ぐっと縮まった。
被災者の寺本京子さん(67)は前にいた人が皇后さまと握手したのに驚き、自身も手を出した。「前の人が手を出したのも、応えてくださったのも意外だった。にこやかに握手をしてくださって、距離の近さを感じた」
両陛下の近くにいた西村博則町長(61)は一瞬「大丈夫かな」と心配した。蒲島郁夫知事(70)は「被災者がありのまま、気持ちのままを表し、それに両陛下が応えられた」と話す。同行した宮内庁幹部は「両陛下と国民の気持ちの距離を象徴している。恐れ多いと感じさせないのが両陛下の魅力」と語った。
この時、天皇陛下の手にはピンクや白などの折り紙が握られていた。避難所で被災者に声をかけていた時、小学生の女の子から手渡された「ユリの花束」だった。「せっかく来てくれるから」と、女の子がこの日作ったという。陛下は「どうもありがとう」と受け取り、それを手に声かけを続けた。そばにいた蒲島知事も「まさかそんなことになるとは」という予想外の光景だった。
訪問先で両陛下に物を渡すのは異例だ。実際、県職員が宮内庁幹部に「大変失礼いたしました」と謝ったほどだった。だが幹部らは、ほほえましい出来事と受け止めた。11年4月の宮城県への被災地お見舞いでは、被災者の自宅跡地に咲いていたスイセンの花を皇后さまが受け取り、大切そうに持ち帰ったこともあった。
帰りの熊本空港の一室。両陛下は、訪問できなかった熊本市の大西一史市長(49)に会った。市長が石垣ややぐらなどが崩れた熊本城の写真を見せると、陛下は一心に見つめ、皇后さまは「まあ、ひどい」と声を上げた。
蒲島知事からの被害状況の説明時と同様、両陛下の質問は途切れることはなかった。侍従から終了時間を知らせるノックがあっても終わらない。2度目のノックの後に侍従が室内に入ると、陛下は、もうちょっと、と制するような合図を送った。(多田晃子)

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