2月5日 池上彰の新聞ななめ読み

朝日新聞2018年1月26日15面:草津白根山の噴火 自治体の備え検証が大切 かつてNHK社会部に在籍していた頃、「災害班」に所属していたことがあります。天変地異のあらゆる事態に対応するグループです。大きな災害が発生していないときは、将来の災害に備えて、地震・火山学者を訪ねたり、噴火しそうな火山を調査したりしていました。草津白根山もそのひとつでした。
ただし、草津白根山が噴火するとすれば、湯釜と呼ばれる古い火口だろうというのが常識でした。まさか別の場所から噴火するとは。これは新聞各紙も同じことでしょう。緊急事態が起きたとき、短時間でどれだけの解説記事をまとめることができるのか。各紙の担当者の力量が問われます。そこで、噴火の翌日である1月24日の朝刊各紙を読み比べてみました。
まずは朝日新聞。1面に草津白根山についてのキーワード解説です。<「本白根山」「逢ノ峰」「白根山」の順で南北に連なる活火山の総称で、最も高い本白根山は標高2171メートル。チックには草津温泉やスキー場がある。白根山では19世紀以降、少なくとも13回の噴火があったとされる。今回噴火した本白根山では約3千年前に溶岩流を伴う噴火があったことがしられている> コンパクトにまとまっています。草津白根山といっても、三つの活火山の総称なのですね。
火山といえば、昔は活火山、休火山、死火山という分類で習った人も多いと思います。しかし、たまたま人間が観測している間に噴火活動がないからといって、休火山や死火山と呼ぶのはおこがましいということになり、現在では1万年以内に噴火したことがあれば活火山と分類することにしました。かつては休火山に分類されていた富士山も、いまは活火山なのです。ふだん火山についての知識に触れることのない読者のためには、この火山の3分類に関する基礎的な解説が必要なのですが、それがないのが残念です。
次に毎日新聞の草津白根山についての解説です。<群馬・長野県境に位置する白根山、本白根山、逢ノ峰などの総称。噴火した本白根山は標高2171メートル。いずれも成層火山で、白根山や本白根山の山頂部には複数の火口湖が見られる。周辺には草津温泉や万座温泉があり、噴気活動が盛んで硫化水素による死亡事故例もある。日本百名山などに選ばれ、登山客が多い> 草津白根山を語る上で「硫化水素による死亡事故例」は欠かせない情報です。朝日にこの情報がないことに驚きます。毎日は、草津白根山が「日本百名山」に選ばれ、登山客が多いことも触れています。朝日には、この情報はありません。ただ、毎日は「成層火山」という専門用語が解説もないまま登場します。地学に詳しくない人もいるのですから、ここは一言解説がほしいところです。
読売新聞はどうか。草津白根山に関する説明は朝日と大同小異ですが、「逢ノ峰」とルビがふってあります。これは読者に親切ですね。読売が朝日や毎日と違うのは、群馬県の草津町が避難計画を策定していなかったことを取り上げている点です。火山被害の危険性がある地域に関しては、関係自治体が避難場所や避難経路を定め、ロープウェー駅やホテルなどの集客施設に対して避難確保計画の作成義務が課せられています。<しかし、国が火山被害警戒地域に指定した全国49火山の155市町村のうち、16年度末時点で計画の策定を終えたのは40市町村で全体の4分の1にとどまる><草津白根山では、被害が出た草津町など群馬、長野両県の5町村が同地域に指定されているが、避難計画を策定したのは群馬県嬬恋村だけ。草津町は未策定で、集客施設では、草津国際スキー場を含めて計画を作っていない>
これは驚くべきことですね。危険な火山は全国にあります。避難計画をまだ作っていない自治体への警告になるのです。これこそ新聞の役割でしょう。
◇東京本社発行の最終版を基にしています。

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