2月13日 もっと知りたい 高校野球「4・5」

朝日新聞2020年2月6日夕刊13面:プロは球児を自由に指導できないの? 昨年末、プロ経験者が高校生や大学生に指導できるようになる学生野球資格を回復させる研修会が、注目を集めた。大リーグ通算3089安打を記録し、同年3月に引退したイチローさん(46)=本名・鈴木一朗さ=さんが参加したからだ。日本高校野球連盟・田名部和裕理事は、「イチローさんからの申請書に『(学生野球の)役に立ちたい』と書いてあった」と明かした。世界的な選手の指導が受けられるかもー。アマチュア球界にとって明るい話題だった。一方で、同じように受講した元プロ野球広島の前田智徳さん(48)の参加理由は「息子が高校球児。気兼ねなくグランドに足を運べるように」。日本学生野球憲章では、学生野球資格がなければ高校の指導者になれない、などプロと学生の関係を定めている。親子であっても気遣いが必要な「距離感」が、プロとアマの間にある。両社はかつて断絶状態にあった。1961年、社会人選手がプロに引き抜かれる「柳川事件」が発生。同年、交渉が認められていない全国選手権大会開催期間中に球児のプロ入団が発表される事案も起きた。当時の憲章では戦前の野球人気の過熱で起きた商業化や興行化の反省から、職業野球(プロ)との関係を厳しく定め、選手獲得に一定のルールを設けていた。過熱したスカウト活動にアマ側の不信感が強まり、関係が決裂した。雪解けは80年代に入って緩やかに進み始めた。元プロが高校教諭として10年以上在職することを条件に指導が可能になる「教諭特例」ができ、5年(94年)、2年(97年)と短縮されていたった。大きな転機は、2003年に始まった現役プロ選手によるシンポジウム「夢の向こうに」だった。その後も毎年開かれ、いまでは現役のプロが高校生に直接、技術指導できる貴重な機会だ。こうした活動が積み重なり、13年には研修会を経て学生野球資格を回復すれば指導者になれる新制度も導入。垣根は以前より低くなった。昨年11月に福岡県筑後市で開かれた「夢の向こうに」。福岡県内115校から800人を超える球児が参加した。「プレミア12」の日本代表で優勝に貢献したソフトバンクの周東佑京選手(23)は身ぶりをまじえて走塁を指導した。「チャレンジして怒られるなら、怒られた方がいいよ」などと声をかけると、球児は食い入るように聞いていた。元中日の和田一浩さん(47)は打撃を指導。イベント後はこう語った。「目に見える進展もあるけど、もう少し進んでもいいのでは。いずれ、いつでも高校生に教えられる環境になることを望んでいます」 無条件での交流解禁には慎重な意見もある。高校によって地域性やOBの有無で、プロの指導を受けられずに格差が生まれているというのもその一つだ。ただ、実現すれば球界全体の競技力向上だけでなく、普及活動にも大きな効果が期待できる。(小俣勇貴)
朝日新聞2020年2月7日夕刊9面:子どもに広める活動は進んでいるの? 「野球離れ」に歯止めをかけようと、主体的に普及活動に取り組む高校がある。そのひとつが、公立校の平田(島根)だ。今春の第92回選抜大会に、戦積だけにとらわれずに選考される「21世紀枠」で出場する。部井の「普及班」が地元の未就学児を対象に、数年前から野球体験会を開いてきたことが評価された。幼稚園や保育園への打診方法から幼児への接し方まで、部員が感じた留意点をマニュアルにし、島根県高野連が加盟校と共有している。出場校を選考する1月24日の会議で、平田を推薦した島根県高野連の萬治正専務理事が、ある体験会の様子を紹介した。終わり際、何か言いたそうにしていた園児がいたという。先生が促すと、「お兄ちゃん、抱っこして」と部員にお願いした。「おいで」と声をかけると、他の園児も次々と部員らに駆け寄った。萬治専務理事は熱弁した。「野球部のお兄ちゃんは憧れのヒーローになりました。全国でこの感動的な光景が一日でも早く見られることを願います」。野球人口減を念頭に、「普及活動は、待ったなしです」。こうした取り組みへのサポートが2018年度に始まった。「高校野球200年構想」だ。春夏の甲子園大会を主催する日本高校野球連盟と朝日・毎日両新聞社が高校野球を次代につなぐため、「普及」「振興」「けが予防」「育成」「基盤作り」の5大目標を掲げて事業を展開している。運営費や助成金は、全国選手権大会の剰余金の一部などを積み立てた基金から支出。初年度は全国で121事業が実施され、19年度は約200事業が展開されている。平田が取り組む体験会もその一環だ。普及活動に必要な用具の配布や各都道府県高野連が開く子ども向けの野球体験フェスティバルも支援している。支援を受けずに活動する学校もある。姫路南(兵庫)は、昨年12月に地元少年野球チームを自校グランドに招き野球教室を開いた。「勝手の分かる場所だから安全も確保しやすい」と吉本純也監督。少年野球の保護者が高校の保護者に質問できるよう、学校の教室を「相談室」にしたのも好評だった。「お金をかけなくてもできることはあるし、どこの地域、学校でもできる」と吉本監督は言う。200年構想は、まだ「種まき」の段階だ。今後は、姫路南のような工夫を共有し、全国に広げることが必要になる。カギを握るのが5大目標の「基盤作り」にある、地域ごとの協議会の設立だ。「先進県」といわれる新潟では、県高野連をはじめ、小学生、中学生のカテゴリー別で活動する団体がまとまった「新潟県青少年野球団体協議会」が11年にでき、活動を進める。しかし、まだ47都道府県全てに協議会が設置されているわけではなく、活動実態にもばらつきがある。野球界全体が世代や垣根を越えて手を取り合う。次の100年に向け、最も大切なことだ。=おわり(小俣勇貴)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る