2月12日 デジタル時代の地方紙「4・5」

朝日新聞2020年2月6日夕刊13面:ウェブ専門 紙で安定めざす 栃木県足利市のJR足利駅から歩いて5分の通り沿いに、2階建ての空き事務所を改装したカフェがある。おととし7月にスタートした「足利経済新聞」の編集会議は毎月1回、ここで開かれている。「新聞」とうたっているが、ウェブ専門のメディアだ。編集部は7人。編集長の山田雅俊(40)はNPO法人の代表理事を兼ねている。残る6人は、山田が手がけた地元のライター講座を修了した30~40代の女性で、従業員ではなく、業務委託を受けるフリーライターだ。記事1本(800~1千字、写真2枚以上)ごとに定額の原稿料を受け取り、うち2人は副編集長として校正作業の報酬もある。記事の提案や校正作業などの編集上のやりとりは、ほぼネット上で完結させている。いずれもフルタイムの記者ではなく、保育士や飲食店員などの仕事を掛け持ちしている。記事の配信ペースはおおむね平日に1本。「台風19号で臨時休業や閉店時間の繰り上げが相次ぐ」「映画やドラマの撮影用に渋谷スクランブル交差点のオープンセットを建設へ」など身近な話題が多い。事件や事故は取り上げない。どの記事も無料で読め、サイトに掲載される広告が収入源だ。ネット広告の単価は低く、記事を無料公開して広告収入を稼ぐ「広告モデル」の先行きは見通しが立ちにくい。会社の規模が違うため単純に比べられないが、多くの地方紙もこの点で苦労している。足利経済新聞の収支はどうなのか。山田は「毎月トントンで、たまに赤字」と打ち明ける。山田はこの春からフリーペーパーを発行する準備を進めている。地元の企業や団体をまわってネット広告をお願いする際に「紙なら考える」とよく言われたからだ。「地方はまだ紙への信頼感があるように思う。紙とネットの両輪で経営を安定させたい」 足利経済新聞と同様に「〇〇経済新聞」と称するローカルメディアは全国に約120ある。〇〇には「旭川」「石垣」などの地名が入る。いずれも各地のウェブ制作会社などが本業と別のメディア事業として始めたものだ。各社の社員やフリーライターが街中を歩いてネタを探し、記事を発信する。2000年に東京・渋谷の企画会社が始めた取り組みが起点になっている。互いにリンクを張り、緩やかなネットワークを組んでいる。約120歳との合計のページビューは月平均1650万ほどという。サイト開設から3年が過ぎた熊谷経済新聞(埼玉県熊谷市)。副編集長の細井典子(43)がニュースの配信を始めて痛感したのは、地元の話題を紹介するサイトがいくつもあることだった。「どこにも書かれていない話か、独自の切り口がないと読まれない」 ウェブ制作会社の代表を兼任する編集長の宮迫功次(43)もこう言う。「ネットは広告の効果が数値ではっきり示されるシビアな世界。ネットニュース利益を上げていくのは容易ではない」=敬称略(土屋亮)
朝日新聞2020年2月7日夕刊9面:突き破れるかヤフーの壁 ネットニュースの世界でヤフーが急成長していた2006年、全国の地方紙をオンラインで団結させる試みが動き出した。共同通信の呼びかけでできたニュースサイト「47NEWS」。地方紙の力を結集し、各地の出来事が一覧できるサイトをめざした。当時、その中心にいた初代エディターの畑仲哲雄(58)に会った。構想段階から関わり、各地から送られてくるニュースをさばく立場にいたが、11年に共同通信を退社し大学に転じた。龍谷大学教授となった畑仲は、琵琶湖を見下ろす大津市の山あいのキャンパスで学生にジャーナリズムを教えつつ、地方紙の研究をライフワークにしている。畑仲は記者時代、自分のホームページをつくり、自作の小説をネットで公開する趣味人だった。自由奔放さを上司ににらまれ、長く席を置いた経済部の後は「傍流の職場をまわされた」という。一転してヤフーに挑む精鋭チームに呼ばれたのは、畑仲に豊富なネット経験があったからだった。畑仲らは地方紙をまわり「一緒に汗をかいてください」と頭を下げたが、戦時中の言論統制の名残で「1県1紙体制」を堅持する地方紙は総じて地域独占の意識が強い。「余計な仕事を増やすな」「うちは名前だけ載っていればいい」。冷たい反応も多かった。サイト開設後は相方のエディターと2人で約50社の地方紙のサイトをくまなくみて重要なニュースを探し、出稿を求めた。夜、家に帰っても携帯電話を手放せなかった。日々くたくたになるまで働いたが、各紙の足並みはそろわず、ITに精通した人材も足りなかった。ヤフーとの差を痛感した。当時を思い出し、畑仲は自らに言い聞かせるように言った。「一つの旗を立てて地方紙がスクラムを組んだ。経済的に得るものは少なかったかもしれないが、大きな挑戦だったと信じている」 畑仲が去って4年後の15年。47NEWSを残しながら、共同通信は新会社「ノアドット」を設立する。仕組みはこうだ。ネット上に地方紙の記事を蓄積する「ニュースの倉庫」を新設。そこから様々なサイトに記事を引き出して使ってもらう。そこに付随する広告収入を地方紙に高い比率で分配する。成功のカギは、多くの地方紙が魅力ある記事を「倉庫」にたくさん送り込んでくれるかどうかだが、利用はまだ低調だ。ノアドット最高執行責任者の中瀬竜太郎(44)は「会社どうしの壁の高さを実感している」と言う。実際、多くの地方紙はそれぞれの会社ごとにデジタルに挑んでいる。それでも、中瀬は諦めていない。地方紙は一丸になってこそ存在感を示せると思うからだ。米国の事例を参考にすることが多い日本メディアへの影響を考え、米国の地方紙にノアドットへの参加を働きかけている。社員も米国に駐在させた。中瀬は言う。「これが成功すれば日本への刺激になり、突破口が開けるかもしれない」=敬称略(おわり)(土屋亮)

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